アナログかデジタルか モーガン・スーパースポーツ x ヒョンデ・アイオニック5 N(1) 共通項とは?

公開 : 2025.12.19 18:05

ほぼ「290」をともに得た2台 電動時代の運転する喜びを体現したアイオニック5 N 名作のデジタル時代のリメイク版といえるスーパースポーツ 対局の2台をUK編集部が乗り比べ

パワーウエイトレシオが共通する2台

共通項は殆どない2台に思える。技術的には、対局にあるかもしれない。他方はガソリンエンジンで走る、レトロフューチャーな見た目のブリティッシュ・ロードスター。もう一方は、電気モーターで四輪が駆動される、大きなアジアン・ホットハッチだ。

実際のクルマ選びで、この2台を並べて悩むことはないはず。しかし、290という共通する数字がある。もちろん最高出力ではない。1t当たりの馬力を示す、パワーウエイトレシオがともに290ps/tなのだ。だいたい。

ブロンズオレンジのモーガン・スーパースポーツと、ガンメタリックのヒョンデ・アイオニック5 N
ブロンズオレンジのモーガン・スーパースポーツと、ガンメタリックのヒョンデアイオニック5 N    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ヒョンデ・アイオニック5 Nは、2235kgで650psだから、290ps/tちょうど。モーガン・スーパースポーツは、1170kgと半分近い車重で335psだから、289ps/tになる。

前者は、2基の永久磁石同期モーターが繰り出すのに対し、後者はBMW由来の3.0L直列6気筒ターボエンジン。運転体験の特徴が違っていて、当然といえる。

電動時代の運転する喜びを体現

しかし、アイオニック5 Nはエンジンモデルへ寄せている。実際はギアチェンジしていないのに、擬似的な変速を楽しめる。バックファイヤーを放つマフラーもないのに、ゴロゴロと唸る人工音が響く。

英国を始めとして、韓国以外でも話題を巻き起こす理由は、バッテリーEVへ抱くわれわれの期待を超えているからだろう。ボタン1つで、日産GT-Rのような操縦性が体現される。爆発的な加速力でワインディングを駆け上れば、望外な歓喜が湧いてくる。

ヒョンデ・アイオニック5 N(英国仕様)
ヒョンデ・アイオニック5 N(英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

シャシーは機敏に反応し、感触豊かなステアリングホイールは指先で操れる。アクセルペダルには、パワフルなエンジンが放ったような、ダイレクトでメカニカルな「波動」が伝播するかのよう。電動時代における運転する喜びが、ここにある。

ゴジラと呼ばれたGT-Rのように、荒々しくも緻密。後席を備えたハッチバックであることも、称賛を呼ぶ理由の1つだろう。現時点で、EV技術の頂点にあるといっていい。

名作の見事なリメイク版

感慨深く、背の高いドアを開く。アグレッシブなスタイリングをまとった四角いヒョンデが、手に汗をかかせる興奮を生み出している。

旋回軸はシャシー中央にあり、リアアクスルをスライドさせた、鋭い90度ターンは朝飯前。ドラマチックでありながら、操る安心感も高い。正真正銘のドライバーズカーだ。加えて、EVだから基本的にランニングコストは低い。長い保証期間も心強い。

モーガン・スーパースポーツ(英国仕様)
モーガン・スーパースポーツ(英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

そんな熱い気持ちのまま、スーパースポーツへ乗り換える。優雅に曲線を描くフォルムが、ブロンズオレンジで染められている。戦前の趣を醸しつつ、未来的。ラインはクラシカルでも、ディティールはミニマルに仕上げられ、時代を超越した美がある。

同時に、しっかりモーガン。他ブランドとは一線を画す。名作の見事なリメイク版といえるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ヴィッキー・パロット

    Vicky Parrott

    2006年より自動車ジャーナリストとして活躍している。AUTOCARを含む複数の自動車専門誌で編集者を歴任した後、フリーランスとして活動を開始し、多くの媒体で執筆を続けている。得意分野はEV、ハイブリッド、お菓子。2020年からは欧州カー・オブ・ザ・イヤーの審査員も務める。1992年式のメルセデス・ベンツ300SL 24Vの誇り高きオーナーでもある。これまで運転した中で最高のクルマは、2008年のフォード・フィエスタSTとアルピーヌA110。どちらも別格だ。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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