2025年の理想ペアかも モーガン・スーパースポーツ x ヒョンデ・アイオニック5 N(2) 大胆乗り比べ

公開 : 2025.12.19 18:10

ほぼ「290」をともに得た2台 電動時代の運転する喜びを体現したアイオニック5 N 名作のデジタル時代のリメイク版といえるスーパースポーツ 対局の2台をUK編集部が乗り比べ

どう生きるべきか考えさせるクルマ

モーガン・スーパースポーツは、奇跡的な存在かもしれない。クルマの運転を通じて、どう生きるべきかすら考えさせる。

ツイード織りのジャケットを着て、籐で編んだカバンを積んで、毎日運転したいと思わせる。輝かしい1950年代へ、タイムリープしたように。オプションのナイトロン社製ダンパーは、2020年代ならではかもしれないが。

ブロンズオレンジのモーガン・スーパースポーツと、ガンメタリックのヒョンデ・アイオニック5 N
ブロンズオレンジのモーガン・スーパースポーツと、ガンメタリックのヒョンデアイオニック5 N    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

スーパースポーツを運転するまでは、ヒョンデ・アイオニック5 Nこそ、現在の自動車技術の集大成といえるだろうと思っていた。賛否両論あることも理解するが、日進月歩のバッテリーEV技術における、進化の高みを感じることができるから。

だが、スーパースポーツを知ってしまうと、さほど輝いては見えない。それが本音だ。

無二の特徴を生むドライバー前方の旋回軸

確かに、フロントにエンジンを積んだリミテッドスリップ・デフ付きの後輪駆動で、従来的なパッケージングではある。車高が低く、ロングノーズ。クロスオーバー風ハッチバックのEVとは、かけ離れている。運転体験の魅力も、対照的といえる。

低く後ろ寄りのドライビングポジションが、その鍵を握っている。リアタイヤの直前に座り、ロングノーズを眺めながら操る感覚は、アイオニック5 Nと同じくらい異次元。ドライバーの前方にある旋回軸が、無二の特徴を生んでいる。

ブロンズオレンジのモーガン・スーパースポーツと、ガンメタリックのヒョンデ・アイオニック5 N
ブロンズオレンジのモーガン・スーパースポーツと、ガンメタリックのヒョンデ・アイオニック5 N    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

コミュニケーション力やダイレクトさは、遥か上。ステアリングは滑らかな感触が心地良く、低域での鋭さは目からウロコ。負荷が高まるほど、手応えは増していく。

BMW由来の3.0L直列6気筒エンジンは、フレキシブルに反応する。アイドリング時は、カチカチとメカノイズが目立つものの、発進すれば燃焼音がオーバーラップ。回転上昇とともにパワーがみなぎり、豊かな咆哮が周囲を満たす。

現代のアナログなクルマに求めるすべて

アイオニック5 Nのように爆発的な加速ではないが、充分以上に速い。0-100km/h加速は、どちらも3秒台でこなす。個性の強い体験を称えるのに、そんな数字は大きな意味を持たないとしても。

スーパースポーツには、現代のアナログなクルマに求める、すべてが備わる。8速ATも確実に仕事をこなし、充足感で不満はないだろう。モーガンというブランドだけでなく、ブリティッシュ・ロードスターとして、今の理想像にあると思う。

ガンメタリックのヒョンデ・アイオニック5 Nと、ブロンズオレンジのモーガン・スーパースポーツ
ガンメタリックのヒョンデ・アイオニック5 Nと、ブロンズオレンジのモーガン・スーパースポーツ    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

サイドウインドウは脱着式。ドアハンドルはクロームメッキ。センターコンソールは、ウッドパネルが飾る。これらが、現代的な操縦性や動力性能と調和している。ある程度の妥協はあるが、細部に至るまで感動を誘うクルマだと思う。

アイオニック5 Nは、そこまで強くは心を動かさない。日常との親和性がより高く、奇抜さが薄いからかもしれない。とはいえ、劣らず素晴らしいドライバーズカーだと思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ヴィッキー・パロット

    Vicky Parrott

    2006年より自動車ジャーナリストとして活躍している。AUTOCARを含む複数の自動車専門誌で編集者を歴任した後、フリーランスとして活動を開始し、多くの媒体で執筆を続けている。得意分野はEV、ハイブリッド、お菓子。2020年からは欧州カー・オブ・ザ・イヤーの審査員も務める。1992年式のメルセデス・ベンツ300SL 24Vの誇り高きオーナーでもある。これまで運転した中で最高のクルマは、2008年のフォード・フィエスタSTとアルピーヌA110。どちらも別格だ。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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