覚悟と注意が不可欠 マセラティ 3200GT 英国版中古車ガイド 当時のベスト・トライデント

公開 : 2023.04.17 08:25

20世紀後半で最高のマセラティといえた、3200GT。魅力的で安価に購入できるものの、充分な注意が必要だと英編集部は指摘します。

多くの名声を残してきたイタリアの名門

1万ポンド(約161万円)で、イタリアの名門が生み出したクーペを買える。一見お買い得に思えるかもしれない。ただし、そんなにうまい話は転がっていないものだ。

20年ほど前のマセラティを好調に走らせるには、ちょっとした新車を買えるほどの維持費が必要になる。年間の走行距離がさほど長くなくても。それでも、他のモデルにはない魅力を放っていることも事実だと思う。

マセラティ 3200GT(ティーポ338/1998〜2002年/英国仕様)
マセラティ 3200GT(ティーポ338/1998〜2002年/英国仕様)

自動車史を振り返れば、マセラティほど多くの名声を残してきたブランドは多くない。トライデントの紋章が刻まれたキーをクルマ好きの友人に見せたら、きっと驚いてくれるだろう。銀行口座の心配もしてくれるかもしれないが。

そんなお手頃価格になったモデルが、ティーポ338、3200GTだ。発売は1998年で、カロッツエリアのイタルデザインによる妖艶なスタイリングに、ラグジュアリーなレザー・インテリアが組み合わされている。ブーメラン形状のテールライトが特長だった。

長いボンネットを開くと、スロットルにドライブバイワイヤ技術を採用した、DOHCの3.2L V型8気筒ツインターボエンジンが姿を表す。バンク角は90度で、最高出力は375psが主張されていた。

0-100km/h加速は5.1秒でこなし、最高速度は270km/h。イタリアン・グランドツアラーとして、まったく不足ない動力性能といえる。

新車当時は4速ATの方が高評価

トランスミッションは、6速マニュアルと4速オートマティックが選べた。ゲトラグ社製の6速MTは、潤滑にパワーステアリング用フルードを用いたことが特徴。クラッチが重く、パワーデリバリーが激しく、当時の試乗では4速ATの方が評価は高かった。

英国仕様の場合、殆どの3200GTにはスポーツパッケージ・サスペンションが選ばれている。これには、電子制御のアクティブ・ビルシュタイン・ダンパーが含まれる。

マセラティ 3200GT(ティーポ338/1998〜2002年/英国仕様)
マセラティ 3200GT(ティーポ338/1998〜2002年/英国仕様)

安定性を高めるため、ブレーキング時はフロントの減衰力が強まり、リアが弱まる。カーブでのボディロールも、可能な限り抑えていた。スポーツ・モードを備え、ボタン1つでタイトな乗り心地を楽しむことが可能だった。

乗り心地は硬めで、ジャガーXKRがしなやかにこなす路面の不整も、ボディへ振動として伝えた。とはいえ、スポーティなクーペとして許容できる範囲。100km/h以上でロードノイズが大きくなるという癖もあるけれど。

ステアリングは切り始めで若干曖昧ながら、ロックトゥロック2.7回転と適度にクイック。パワーステアリングも備わるが、感触は悪くない。

乾燥路面でのグリップレベルは高いものの、濡れた路面では注意が必要。トラクション・コントロールは、うかつにオフにしない方がいい。

リミテッドスリップ・デフが装備され、ターボブーストが高まると一気にリアタイヤへ大きなトルクが伝わる。技術があれば、テールスライドに興じるのも悪くない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ピアソン

    Mark Pearson

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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