あえての不完璧ボディ アストン マーティンDB5 普段使いのこだわりレストア 後編

公開 : 2023.05.13 07:06

公道を臆することなく走るDB5

インテリアはDB5らしくブラック。見事なオリジナル状態にある。レザーシートにはヒビが出始めているが、破れはなく、少しやれたボディと調和している。もちろん、しっかり必要なレストアは施されている。

ブラックに塗装されたダッシュボードは、擦り傷1つなく艶が深い。スイッチ類は新品のよう。メーター類はクリアで、正確に動いている。DB5の人間工学は悪くない。ペダルの位置は適正で、足を軽く伸ばしたドライビングポジションに落ち着ける。

アストン マーティンDB5とオーナーのロドニー・マクマホン氏
アストン マーティンDB5とオーナーのロドニー・マクマホン氏

グランドツアラーとして、快適装備も疎かではない。1960年代の基準では滑らかで静かに動く、パワーウインドウを備える。運転席と助手席で別々に機能する送風機能も用意され、両脇のレバーで必要なら外気に当たれる。

ロドニーの場合、普段使いの機能も忘れていない。オリジナルのラジオはダミーで、その下のスピーカーグリルを外すと、現代的なデッキが姿を表す。足もとには、ステレオのスピーカーも隠されている。

ジェームズ・ボンドの活躍で、クラシック・グランドツアラーとは別の評価基準が生まれた、アストン マーティンDB5。しかしロドニーは、本来あるべき姿のように、公道を臆することなく走っている。

1980年代でも、DB5は少しヤレた姿でロンドンの街中を走っていた。休日には、オーナーが遠くまで旅を楽しんでいた。そんな姿勢を今でも貫く1人がいることを知り、筆者はうれしい気持ちになれた。

アストン マーティンDB5(1963〜1966年/英国仕様)のスペック

価格:4248ポンド(新車時)/100万ポンド(約1億6100万円)以下(現在)
販売台数:1063台
全長:4752mm
全幅:1676mm
全高:1320mm
最高速度:239km/h
0-97km/h加速:6.2秒
燃費:5.3-7.1km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1466kg
パワートレイン:直列6気筒3995cc自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:286ps/5500rpm
最大トルク:39.7kg-m/3850rpm
ギアボックス:5速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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