819psの素晴らしい処女作 ルーシッド・エアでニューヨークを走る 衝撃的な速さ 前編

公開 : 2023.06.03 09:45

エア・パフォーマンスなら1050ps

車重は2360kgと軽くないものの、0-100km/h加速を3.0秒でこなす俊足を得ている。もしこれで満足できない場合、エア・パフォーマンスも選べる。こちらには1050psが与えられ、0-100km/h加速を2.6秒に縮める。

容量が112kWhと大きい駆動用バッテリーも、自社開発。航続距離は北米規格のEPA値で、最長830kmがうたわれる。急速充電能力は最大300kWと超高速。もし充分な急速充電器を見つけられれば、21分で480kmぶんの電気を蓄えられるという。

ルーシッド・エア・グランドツーリング(北米仕様)
ルーシッド・エア・グランドツーリング(北米仕様)

滑らかで空力特性に配慮されたスタイリングも、エネルギー効率を最大化し、航続距離を伸ばすことに貢献している。コンパクトなコンポーネントによって、全高は競合モデルより40mm前後低い。

空気抵抗を示すCd値は0.20と、サイズを考えると驚くほど小さい。デザイナーのデレク・ジェンキンス氏は、「あらゆるものを削り、最小化しました」。と話す。ヘッドライトの高さは27mmしかない。

今日はマンハッタンを抜け、ニューヨーク州北部の自然を目指そうと考えている。「ダウンタウンへは行かないんですね?」。と、ルーシッドの担当者が尋ねる。

もちろん立ち寄りたい、と答える。「渋滞はまだ酷くないようです。彼はあと数時間、予定がないようですね」。誰かと確認すると、ドナルド・トランプ前大統領のことだった。奇しくもニューヨーク群裁判所へ出廷する、その日だった。

彼が動くと道路が閉鎖され、交通は混乱をきたす。確かに、今のところ交通量は少ないようだ。

職人技を感じさせるディティール

エアのインテリアは、ボディのスタイリングと同様にフレッシュな雰囲気に溢れている。職人技を感じさせるディティールと、先進的なテクノロジーが融合している。

ナッパレザーにアルパカウール、アルカンターラ、カーボンオークといった上質な素材がふんだんに用いられ、知覚品質は唸るほど高い。内装パネルのギャップもほぼない。

ルーシッド・エア・グランドツーリング(北米仕様)
ルーシッド・エア・グランドツーリング(北米仕様)

フロントシート側とリアシート側で、内装の配色が異なることも好印象。前席はスポーティなダーク基調で、後席はブラウン中心で、明るくラグジュアリーに仕立てられている。コンセプトカーのようで、絶妙な統一感もある。素晴らしいデザインだ。

大きな1面のタッチモニターへ車載機能のインターフェースを集約するのがテスラだが、エアのダッシュボード上にはカーブを描く扇型の32インチ・モニターが据えられている。左側がドライバー用、右側がインフォテインメント・システム用に別れている。

センターコンソール部分にも、エアコンなどの操作用にタッチモニターが用意され、上部のモニターと連動する。グラフィックは5Kで超高精細。メニュー構造などの設計は高水準で、スムーズに扱えると感じた。

エアコンには、実際に押せるハードボタンも残されているのがうれしい。アップル・カープレイの動作は、少し安定しなかった。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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