BMW428iグランクーペ・ラグジュアリー

公開 : 2014.07.26 15:25  更新 : 2017.05.29 17:59

BMW3/4シリーズで6つ目の車体バリエーション、グランクーペである。同じような名前にグランツーリスモがあるが、こちらは3シリーズに属し、ゆえに側面のドアは4枚で、かさ上げした上屋にリヤのハッチゲートをもつ。翻って、グランクーペは、同様にリヤにハッチゲートを持つが、クーペに近い全高——セダンが1440mmでクーペは1375mmだがグランクーペは1395m——に抑えられて後ろ下がりの上屋プロフィールに造形され、ドアは4枚なのに4シリーズと分類される。してみると、3シリーズと4シリーズはドアの枚数ではなく、ルーフラインで分別されるらしい。アウディA5スポーツバックの対抗商品ということなのだろう。言い添えればコードネームはF36である。

そのスタイリングは、クーペ族に分類はされてはいて、顎下が派手な造作になるあたりはクーペと共通だが、長く尾を引くCピラーが確認しにくい斜め後ろの角度から見たりするとセダンと間違えそうになる。リヤハッチの切線は目立たず、それが開閉するとは俄かには判別しにくいから、セダンとの明確な識別点は、伝統のホフマイスター・キンクを持ちつつも後輪中心よりも後ろまでそれが長く伸びているリヤクォーターウインドウくらいになる。

さて、まず焦点になるのは、こういう上屋の仕立てによって居住性がどう変わっているか。

乗り込んでみると前席は、ステア軸が左にオフセットしていることや、ステアコラムが高くて日本人の平均体型だとけっこうリフトさせなくてならない座面設定も含めて、セダンとほとんど変わらない。

問題は後席だ。本家クーペの後席はヒップポイントがセダンより低く設えられる。そのために膝裏が盛大に浮く。頭もルーフ内張りに容易に触れてしまう。一方、グランクーペの後席ヒップポイントはセダンと変わらない。背もたれの角度も同じようだ。この座らせかたに対して、全高は低くルーフラインも下降しているから、ヘッドルームはセダンよりもキツく、頭頂部とルーフ内張りの隙間はほとんどない。つまり、グランクーペはセダンのキャビン後半だけを変形させているわけだ。ちなみに、キャビン側面の絞り込みは強くないから、頭の上は辛いが横には多少の空間の余裕がある。

ハッチゲートで閉じられる荷室の容積は480ℓでセダンと同じだが、バックレストを前に倒すと1シリーズのその状態よりも100ℓ多い1300ℓとなる。バックレストは所謂シングルフォールドで、倒した状態では荷室はギリギリでフラットにはならない。

走りに関しては、基本的にセダンに準じる。試乗したのは428i、すなわちN20B20A型直列4気筒ターボの高出力版を積むグレード。明らかに遮音を手控えた420i——格差を意図的に作ったのだろう——と違って、4気筒ゆえの振動感は抑えられ、そして回転上限付近でのパワーの先垂れ感も少ない。5シリーズの初期にあった528i用の自然吸気直6のことを忘れてしまえば、これはこれで不満の出ないレベルに仕上がっていると思える。

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