トラックもリデュース・リユース・リサイクル ルナズの電動ゴミ収集車へ同乗 無音が非現実的 前編

公開 : 2023.06.11 08:25

英国の新興企業が開発を進める、既存車両を電動化したゴミ収集車。メルセデス・ベンツがベースの試作車へ、英編集部が同乗しました。

トラックもリデュース、リユース、リサイクル

英国のルナズ社が開発中のゴミ収集車は、7年落ちのメルセデス・ベンツをバッテリーEV(BEV)へ変換したもの。そもそも同社は、名だたるクラシックカーを顧客の要望に応じてBEVへコンバージョンすることを得意としてきた。

サステナビリティに対する取り組みとして、リデュース、リユース、リサイクルという3Rが重要なことは、ご存知の通り。ルナズは、ゴミ収集車にそれを適用させようとしている。

ルナズ・アップサイクルド・エレクトリック・ヴィークル・ゴミ収集車(英国仕様)
ルナズ・アップサイクルド・エレクトリック・ヴィークル・ゴミ収集車(英国仕様)

英国を走り回っているゴミ収集車の多くは、大きくて重たいディーゼルエンジンで走り、排気ガスを大気中に放出している。騒音も小さくない。大量のゴミを遠くへ運ぶ動力源としては優れているものの、将来的に変革が必要なことは間違いない。

そもそも、ゴミ収集車のような走り方の場合、ディーゼルエンジンはあまり適したユニットとはいえない。低速域が中心で、発進と停止を繰り返し、人間が多く住む地域を巡るためだ。

英国の調査機関の報告によると、一般的なゴミ収集車では、ゴミの回収中にアイドリングしている時間の方が長く、走行時より多くの排出ガスを放出しているという。また、ゴミの入ったバケツを持ち上げるリフトも、ディーゼルエンジンで稼働されている。

英国の地方自治体は、CO2の排出量を削減する動きを加速させている。既に少なくない廃棄物処理業者が、ゼロエミッションのゴミ収集車へ切り替える方針を掲げている。そこには、今回ご紹介するクルマも含まれることになる。

デビッド・ベッカム氏も事業へ投資

欧州の働くトラックとして主力ブランドにあるメルセデス・ベンツは、eエコニックと呼ばれる電動トラックを販売し始めた。ゴミ収集車としても、普及していくだろう。

ただし、新しいトラックを製造する過程で大量のCO2も排出される。トラックの耐用年数は長い。そこでルナズは、既存のゴミ収集車に改良を施し、電動パワートレインへ置換するというアイデアを実行し始めた。

ルナズ・アップサイクルド・エレクトリック・ヴィークル・ゴミ収集車(英国仕様)
ルナズ・アップサイクルド・エレクトリック・ヴィークル・ゴミ収集車(英国仕様)

「現在のゴミ収集車を新しい電動トラックに置き換えても、他国へ転売され、そこでCO2を排出することになります。それでは、問題が解決するとはいえません」。と説明するのは、同社を創業したデイビッド・ローレンツ氏だ。

「既存の車両をBEVへアップサイクルすることで、これを打開する必要があると考えます」。ルナズは、自社の電動化された車両をアップサイクルド・エレクトリック・ビークル(UEV)と呼んでいる。

単に、電動パワートレインへ置換するだけではない。価値を加えて生まれ変わらせる、アップサイクルという言葉に、彼らのこだわりが込められている。

詳しく確認する前に、まずルナズ社へ触れておこう。同社は起業家のローレンツと、技術者のジョン・ヒルトン氏によって2018年に創業。当初はクラシックカーの電動化、アップサイクルへ取り組んできた。

拠点を置くのは、シルバーストーン・サーキットからほど近いビジネスパーク。クライアントには裕福なクラシックカー・マニアだけでなく、同社に賛同し投資する、元サッカー選手のデビッド・ベッカム氏も含まれるそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    Move Electric UK

    Move Electric UK

    英国の純EV専門メディア
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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