トラックもリデュース・リユース・リサイクル ルナズの電動ゴミ収集車へ同乗 無音が非現実的 後編

公開 : 2023.06.11 08:26

英国の新興企業が開発を進める、既存車両を電動化したゴミ収集車。メルセデス・ベンツがベースの試作車へ、英編集部が同乗しました。

駆動用モーターの最高出力は503ps

トラックなどの商用車を電動化する、ルナズ社のアプライド・テクノロジーズ部門が設立したのは2021年。現在はゴミ収集車へ注力しているものの、追って幅広い用途のトラックにも対応したいと考えている。

アプライド・テクノロジーズ部門の真新しいワークショップは巨大で、トラック3台分の作業ラインが用意され、年間1100台がラインオフする計画にある。従業員は現在120名だが、300名へ増やすことが目標だという。

ルナズ・アップサイクルド・エレクトリック・ヴィークル・ゴミ収集車(英国仕様)
ルナズ・アップサイクルド・エレクトリック・ヴィークル・ゴミ収集車(英国仕様)

さて、そろそろゴミ収集車へ話を戻そう。ルナズが最初に選んだ車両は、英国でも主力として活躍している、メルセデス・ベンツ・エコニックだ。

メルセデス・ベンツの保証期間は一般的に7年間だが、80万kmまで耐用できるよう設計されている。英国のゴミ収集車の場合、7年後の走行距離は13万km前後になるが、廃棄物処理業者や地方自治体は、保証期間が満了すると車両を交換してしまうらしい。

エコニックは、まだ活躍できる状態にある。そこでルナズの出番。徹底的に洗浄し、ディーゼルエンジンが降ろされ、新しい電動パワートレインが組まれる。きれいに改装されたキャビンが乗り、ゴミ収集用のコンパクターが架装される。

駆動用モーターの最高出力は370kW(503ps)。ハイとローが選べる2段トランスミッションを搭載するが、急な坂道でもゴミを満載した状態で発進・停止を繰り返すことを考えれば、必要なメカニズムだといえる。

駆動用バッテリーは最大393kWh 車内も一新

ラダーフレームの両側に並べられる駆動用バッテリーの容量は、最大で393kWh。1ユニット当たり65.5kWの容量を持ち、通常は4ユニットから6ユニットが積まれるという。走行する地域に応じて、具体的な容量が決定される。

充電能力は22kWと低い。急速充電器にも対応可能だが、ゴミ収集車は回収を終えると翌日まで車庫で保管されることが通常なため、高価な装備は必要ない。

ルナズ・アップサイクルド・エレクトリック・ヴィークル・ゴミ収集車(英国仕様)
ルナズ・アップサイクルド・エレクトリック・ヴィークル・ゴミ収集車(英国仕様)

キャビン内部も入念にアップサイクルされる。シートは新しいクロスで張り替えられ、明るいイエローのシートベルトへ交換される。冬場に備えて、エアコンより効果的に温まれるという理由から、シートヒーターも備わる。

ダッシュボードには、10.0インチのモニターが2面追加される。1つは車両周辺の映像を確認するカメラ用。もう1つは、アップル・カープレイに対応したインフォテインメント・システム用だ。

運転環境も見直され、主要な操作系の殆どが運転席側に移動。ステアリングホイールから手を伸ばすだけで、触れられるようになっている。リアカメラとセンサーが追加され、後方を監視する負担も減らされている。

カップホルダーは、通常のエコニックには2つしか備わらないが、5つへ増やされる。仮に4名体制でのチームが組まれても、飲み物の置き場には困らない。

エアコンの操作パネルも新しくなり、ボタン類も強化される。ゴミを収集するスタッフが、ダッシュボードへ足を載せることを考慮して。

記事に関わった人々

  • 執筆

    Move Electric UK

    Move Electric UK

    英国の純EV専門メディア
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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