トラックもリデュース・リユース・リサイクル ルナズの電動ゴミ収集車へ同乗 無音が非現実的 後編

公開 : 2023.06.11 08:26

ほぼ無音で走るゴミ収集車は非現実的

サイドミラーは、カメラとモニターのシステムへ交換。狭い市街地を走ることが多いゴミ収集車の場合、ボディから大きくはみ出したミラーは、接触事故の原因になりやすい。

ゴミを溜めるコンパクターは、圧縮ブレードなどがアップグレードされる。配線用のワイヤーは、ネズミに噛み切られにくい強化品を採用しているそうだ。

ルナズ・アップサイクルド・エレクトリック・ヴィークル・ゴミ収集車(英国仕様)
ルナズ・アップサイクルド・エレクトリック・ヴィークル・ゴミ収集車(英国仕様)

大型トラックということで、今回は助手席への同乗。BEVが静かだというのは当たり前になっているかもしれないが、ゴミ収集車がほぼ無音で走るという体験は、かなり非現実的だった。

ルナズのワークショップを出ると、フェンスで仕切られたシルバーストーン・サーキット横の道へ出る。普段は大型トラックに乗ることのない筆者だが、想像以上に快適なことへ驚く。パワートレインはスムーズで、かなり加速も鋭い。

サーキットでは新しいF1マシンがテスト走行中で、数名のファンが熱心にカメラを向けていた。われわれの接近に気が付き振り返ると、エンジン音のしないゴミ収集車を、不思議そうに眺めていた。

大人4名が乗っても、キャビンは窮屈に感じられない。フロントガラスが大きく、見晴らしが良い。ベースは7年前のエコニックだが、遥かに新しいトラックのように感じる。

ルナズの開発者は、回収作業をシミュレーションするため、ゴミの収集ボックスをこの付近の路上に並べて検証しているという。今回は短時間の同乗にすぎず、現場で問題なく活躍できるのか判断は難しいものの、完成度は間違いなく高いと感じた。

2023年後半に実際の収集ルートで検証開始

2023年後半には、ルナズの電動ゴミ収集車は実際の収集ルートで検証をスタートさせる予定。現在は、それに向けた最終テストへ力が注がれている。廃棄物処理業者との協議が始まっており、入札へ向けた準備も進んでいるとのこと。

同社の創業者、デイビッド・ローレンツ氏は、新しい電動トラックより安く仕上がり、新たに7年間の保証を付帯できると説明する。さらにその7年後には、再びアップサイクルを加え、もう一度路上で活躍することも可能だという。

ルナズ・アップサイクルド・エレクトリック・ヴィークル・ゴミ収集車(英国仕様)
ルナズ・アップサイクルド・エレクトリック・ヴィークル・ゴミ収集車(英国仕様)

加えて、ルナズの取り組みで注目するべきは、電動化の作業を他の拠点でも可能なように、フォーマット化しようとしていること。世界中へアップサイクルされたトラックを輸出するのではなく、主要な市場の近くへ拠点工場を構えたいと考えている。

彼らの取り組みの成果は、最終的にどれだけ多くの電動ゴミ収集車が街角を走ることになるのか、あるいは多くの電動トラックが走り出すかで判断される。それが見えてくるのは、まだ数年は先になる。

しかし、ルナズの取り組みに感銘を受けたことは間違いない。この努力が、無駄になるとは考えられない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    Move Electric UK

    Move Electric UK

    英国の純EV専門メディア
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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