三菱デリカ・ミニ なぜeKクロス・スペースから路線変更? デリカらしさを検証

公開 : 2023.06.20 12:00

三菱デリカ・ミニの試乗記です。「デリカ」の名前を用いるに至った背景、そこに「デリカらしさ」があるのかを取材しました。

eKクロス・スペースではダメ?

華麗なるイメージチェンジはひとまず大成功となったようだ。三菱の新型車「デリカ・ミニ」である。

同車の前身は「eKクロス・スペース」であり、デリカ・ミニは「新型車」という扱いではあるものの、実質的にはそのビッグマイナーチェンジ版に過ぎない。

三菱デリカ・ミニ
三菱デリカ・ミニ

プラットフォームやパワートレインをはじめとする基本メカニズムだけでなくアッパーボディもそのまま引き継ぎ、いっぽうでフロントをはじめとするデザインを変更するとともに新しい名前を付けて新型車としているのだ。

「マイナーチェンジ前」に相当するeKクロス・スペースの2022年1月から12月までの年間販売台数は、ボディを共用する「eKスペース」とあわせてもわずか1万3648台に過ぎなかった。それがデリカ・ミニとなったことをきっかけに、5月25日の発売前日までに約1万6000台の受注を獲得。この数字は、三菱の予想を超えたものだという。

ところで前身のeKクロス・スペースは、登場からたった3年ほどしか経過していない。にもかかわらず車名変更を伴う大幅な路線変更を敢行した背景には何はあるのだろうか。

端的にいえば、eKクロス・スペースではダメだったのだろうか?

開発者によると、最大の理由は若い層からの引き合いが少なかったことだという。eKクロス・スペースはある程度年配の層からは支持を得られたものの、コアターゲットの1つである若いファミリー層のユーザーが期待したほど多くなかった。

そのためデビュー後のかなりはやい段階において、大きな路線変更の検討が始まったのだそうだ。

「デリカ」の名前とイメージを活用

そこで出たアイデアの1つが、世の中に浸透している「デリカ」の名前とイメージを活用することだったという。

そういうと、「デリカのイメージとは言っても、顔つきはデリカに似ていない」と思う人もいるかもしれない。モチーフとなっているのは現行世代ではない。ビッグマイナーチェンジ前の、顔つきが大幅に変わる前のタイプなのだ。

eKクロス・スペースからデリカ・ミニになって人気が急上昇した何よりの理由は、そのデザインにあると考えられる。立派さや偉そうな感じよりも親しみやすさや遊び心が強く感じられるようになった。
eKクロス・スペースからデリカ・ミニになって人気が急上昇した何よりの理由は、そのデザインにあると考えられる。立派さや偉そうな感じよりも親しみやすさや遊び心が強く感じられるようになった。

むしろeKクロス・スペースは現行型のデリカD:5に似ていたのだから、デリカ・ミニになって現行型から大改良前へと「先祖帰り」が起きたといっていい。

eKクロス・スペースからデリカ・ミニになって人気が急上昇した何よりの理由は、そのデザインにあると考えられる。eKクロス・スペース時代のデザインは、大きなグリルやヘッドライト、そしてメッキの飾りなどで上級感はあるものの、無理して頑張っている感じが否めない。背伸びしているオーラが否めないのだ。

しかしデリカ・ミニになって、立派さや偉そうな感じよりも親しみやすさや遊び心が強く感じられるようになった。そんな雰囲気の変化が共感を得た理由だろう。

デリカ・ミニは4つのグレードを展開するが、現時点での売れ筋は最上級グレードの「Tプレミアム」でその比率は約65%と高い。すなわち財布に余裕のある人が多く購入していると考えられる。価格で選ばれるのではなく、懐に余裕のある人が指名買いする存在になった。その変化の意味は大きい。

さて、そんなデリカ・ミニに「デリカらしさ」はあるのだろうか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    工藤貴宏

    Takahiro Kudo

    1976年生まれ。保育園に入る頃にはクルマが好きで、小学生で自動車雑誌を読み始める。大学の時のアルバイトをきっかけに自動車雑誌編集者となり、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。はじめて買ったクルマはS13型のシルビア、もちろんターボでMT。妻に内緒でスポーツカーを購入する前科2犯。やっぱりバレてそのたびに反省するものの、反省が長く続かないのが悩み。
  • 小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    1986年生まれ。クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。

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