韓国キア「ポストSUVの到来」近い? 自動車デザイナーが語るスタイリングの未来

公開 : 2023.06.23 06:25

個性的な外観のモデルで販売を伸ばしているキア。そのデザイン戦略の中枢にあるものを探ります。デザイン責任者は、電動化が進む中でSUV時代の終わりが近づいていることも示唆しました。

個性的なデザイン戦略 その狙いは

自動車ブランドが新しいデザイン戦略に名前をつけるとき、その中身を読み解くのは難しいかもしれない。

モダン・ソリッド、センシュアス・スポーティネスなど、偉大なるマーケティング用電子レンジで作り出された曖昧な用語は、ラインナップのすべての製品にきれいなつながりを持たせるためのものだ。そして今、「Opposites United(相反するものたち)」が登場した。これは海外の怪しい出会い系アプリなどではなく、「自然と人間のコントラスト」からインスピレーションを得るというキア(起亜自動車)のビジョンである。

キアEV9とカリム・ハビブ氏
キアEV9とカリム・ハビブ氏

この名前を解剖してみると、最新のキア車に見られる硬さと柔らかさ、曲線と切れ味のコントラストをすっきりと簡潔に要約している。これらは消費者や評論家から高い評価を得ている。

スポーテージ、ソレント、EV6、EV9、そしてEV5は、その哲学を見事に体現してきた。キアの世界的な成長の大部分が、デザイナーたちの探求心に起因していることは間違いない。

このコンセプトをスケッチパッドからショールームへと導く役割を担うのは、自動車デザイナーのカリム・ハビブ氏だ。彼は、2019年に(インフィニティを経て)キアに入社する以前、ミュンヘンで長年にわたり数々のBMWの線を描いてきたことで知られている。

カナダ人のハビブ氏は先日、3列シートの新型電動SUV「EV9」を発表して注目を集めたが、今後数年にわたってキアが野心的なグローバル製品計画の実現に邁進していく中で、事実上のフロントマンになることは間違いないだろう。

彼は、1つはっきりさせておきたいことがあると言う。EV9の最高級モデルには8万ポンド(約1450万円)の価格設定が予想されているが、キアのデザイン戦略を決定的に後押ししているのは、プレミアムブランドになりたいというあからさまな願望ではない。

「わたし達は決してプレミアムやラグジュアリーを語ろうとはしません。まず、これらの言葉は使い古されています。わたし達には当てはまりません。しかし、わたし達の製品には憧れを抱かせる品質があると思います」とハビブ氏は説明する。

「この言葉が適切かどうかはわかりませんが、わたし達は人々に関心を持ってもらいたいのです」

コンセプトのOpposites Unitedは、個々のモデルだけでなく、ラインナップ全体に適用される。例えばEV9は、兄弟車のEV6とは根本的に異なるデザインアプローチをとっている。また、ピカント(モーニング)とプロシード、スポーテージとストニック、ソウルとソレントの外観上のつながりは、あからさまではなく、さりげないものだ。これは、マトリョーシカ的なアプローチは追求しないというキアの願望の表れである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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