小さな波は起こせる BYDドルフィンへ試乗 多少の弱点も許せるコスパ 航続426km

公開 : 2023.07.26 08:25

充分な製造品質に低くない実用性

インテリアには、アット3ほどの斬新さはない。ダッシュボードの見た目はスマートで、英国価格を踏まえると、製造品質は充分。科学物質的な臭いが強めに残っていた。

ドライビングポジションは良好。シートは電動でスライドできるが、ランバーサポートの具合や、座面の高さは変えられない。

BYDドルフィン・コンフォート(欧州仕様)
BYDドルフィン・コンフォート(欧州仕様)

実用性は高そうだ。運転席周辺にも沢山の収納スペースが用意され、ダッシュボード中央のタッチモニター下部には、スマートフォンを置くのにちょうど良さそうなトレイもある。

後席側の空間も、高身長の大人でも不満のない広さ。荷室容量は345Lで、このクラスとしてはかなり大きい。荷室のフロアは、高さを調整できる。

12.6インチという大きなタッチモニターは、反応が素早く表示も鮮明。だが、サブメニューの項目が多く、折角の大画面を有効に使えていない印象。エアコンの温度調整も、毎回サブメニューをタップする必要がある。

車線維持支援システム付きの、アダプティブ・クルーズコントロールは標準装備。ほどほどスムーズに機能していた。制限速度を超えると警告してくれるのだが、誤作動も多い。簡単にオフにできてもいいだろう。

小さな波は起こせるお手頃な英国価格

果たして中国からやってきたドルフィンは、このクラスのバッテリーEV市場へ大きなうねりを生み出すだろうか。お手頃な英国価格を見れば、少なくとも小さな波は起こせるように思う。

リア・サスペンションがトーションビーム式になる、エントリーグレードのアクティブの英国価格は、2万5490ポンド(約446万円)から。今回試乗したコンフォートは、2万9490ポンド(約516万円)で、デザインは3万990ポンド(約542万円)となる。

BYDドルフィン・コンフォート(欧州仕様)
BYDドルフィン・コンフォート(欧州仕様)

現在販売されている他社のバッテリーEVでは、ドルフィン級のボディサイズと航続距離を同等の価格で得ることは難しい。同じく中国資本の、MGモーター MG4を除いて。

ただし、アット3の結果を踏まえると、BYDが主張する航続距離は少し甘い。今回の試乗での電費は6.6km/kWhとなり、単純計算で400km程度と考えていい。

BYDはお手頃な価格ではなく、スタイリングや完成度などを気に入って、ドルフィンを選んで欲しいと考えている。しかし、インフォテインメント・システムやシャシー、インテリアなどで、強い印象を残せるほどの洗練性は得られていない。

とはいえ、間違いなく価格での訴求力はある。多少至らない部分があっても目を潰れる、という人は少なくないかもしれない。

BYDドルフィン・コンフォート(欧州仕様)のスペック

英国価格:2万9490ポンド(約516万円)
全長:4290mm
全幅:1770mm
全高:1570mm
最高速度:160km/h
0-100km/h加速:7.0秒
航続距離:426km
電費:7.0km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:1658kg
パワートレイン:AC非同期モーター
駆動用バッテリー:60.0kWh(実容量)
急速充電能力:88kW
最高出力:203ps
最大トルク:29.5kg-m
ギアボックス:シングルスピード/前輪駆動

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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