ロータス・セブンの究極進化形 ドンカーブートF22へ試乗 リアルでソウルフル 後編

公開 : 2023.08.11 08:26

車重1t当たりの馬力は675ps。セブンを原型とし、アウディ製5気筒エンジンにカーボンボディのF22を、英国編集部が評価しました。

価格にも納得できる高い製造品質

美しいパイプフレームにカーボンファイバー製シェルが接着剤で固定され、ドンカーブートF22の「ハーフウェイ・モノコック」構造が完成する。先代に当たるD8 GTO-JD70から、シャシー剛性は2倍に向上したという。

フレームの前後に組まれるサスペンションは、ダブルウイッシュボーン式。アルミホイールは19インチで、タイヤは幅が275もある、ナンカンAR1というセミスリック・パターンを履く。

ドンカーブートF22(欧州仕様)
ドンカーブートF22(欧州仕様)

F22を間近に観察すると、デザインの高い自由度を実現させた理由がわかる。フロントガラス周辺だけでなく、見事なヒンジで支えられるバタフライドアや殆どのボディパネルが、エックスコア成形によるワンピースでできている。

試乗車のシャシー番号001は量産に向けたプロトタイプだが、製造品質は高い。量産仕様はそれ以上。少量生産の特別なモデルとして、価格にも納得できるはず。

同社を率いるデニス・ドンカーブート氏は、ケーニグセグパガーニへ一目置いていると話していたものの、ドンカーブートも同等の水準にあると思う。若干、洗練度では及ばなくても。

プロトタイプ・レーシングカーのようにドアは大きく開き、薄いパッドの貼られたカーボン製バケットシートへ腰を下ろす。背後では、リアダンパーのリザーバータンクが光っている。サイドシルは細身で、見た目以上に乗り降りしやすい。

ドライビングポジションは、ケータハムと遠からずながら、しっくり来る。包まれ感があり、マクラーレンのように安心感は高い。ボンネット越しの前方視界は良好だ。

ステアリングは反応が鋭く正確、情報豊か

車内は思いのほか広い。F22はゼロから設計されており、D8 GTO-JD70と比べてキャビンの横幅は80mm、前後長は100mm広げられている。

デニスは、F22の開発は1つの賭けだったと振り返る。従来よりひと回り大きく、デタッチャブル・ルーフを被せたハードトップをまとい、オリジナルのセブンよりクルマらしい見た目になったためだ。だが、根底にある個性は変わらなかった。

ドンカーブートF22(欧州仕様)
ドンカーブートF22(欧州仕様)

クラッチペダルを踏み込む。渋滞中でも重さに悩まされるほどではないが、軽いとは表現できない。

5気筒エンジンは、控えめに目を覚ます。F22の中では、落ち着いた印象を受ける。独特の鼓動が、大胆なスタイリングのマシンと良く似合う。

ステアリングのアシストは、オーナーが選べる。フロントタイヤの幅が広く、アシストなしの試乗車の場合、ステアリングホイールはかなり重い。低速域では腕に相当な力を込めて、ようやくフロントノーズの向きが変わる。

キャスター角を調整し、フィードバックとアンダーステアを改善したという。速度が増してくると、反応が鋭く正確で、情報量が豊かだということが見えてくる。ブレーキペダルも硬いが、タッチは素晴らしい。

シフトレバーは短くタイト。滑らかにゲートを選べる。マシンを身体で操るという、喜びがある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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