ロータスMk VI ブランドの分岐点 1097ccのクライマックス・ユニット 前編

公開 : 2022.02.05 07:05  更新 : 2022.08.08 07:16

スポーツカーとしてロータスの基盤を築いたといえる、Mk VI。レストアされたばかりの1台を、英国編集部がご紹介します。

ロータス・カーズの本当の始まり

この小さなクルマが、ロータス・カーズ社の本当の始まりといえる。噂通りタイトなコクピットへ、身体を滑らせるように落とす。ドライバーの正面には必要なメーター類が、読みやすい位置に並んでいる。

腕はトランスミッション・トンネルと、ボディサイドの切り込まれたラインへ自然に収まる。着座位置は地面に付きそうなくらい低く、背もたれは倒れ気味。狙った通りの低重心であることを、強く匂わせる。

ロータスMk VI(1952〜1957年/英国仕様)
ロータスMk VI(1952〜1957年/英国仕様)

キーを捻り、燃料ポンプとイグニッションのスイッチをオンにし、小さなボタンを押す。クライマックス・エンジンは、フォード社製のツイン・ウェーバー・クロスフローより、威勢のいいサウンドを放って目を覚ました。

ステアリングホイールの手応えはダイレクト。ペダルやシフトレバーのストロークも不要に長くなく、同様に扱いやすい。サーキット走行に不安なところは微塵もない。

走り始めてすぐに、クラシックなロータスと親しくなれる。大きく弧を描くサイクルフェンダーが、ミニマリズムを追求したクルマであることを象徴している。すべての仕上がりが、シャシーへ安心感をもたらしている。

フロントタイヤのグリップ力は想像以上。とても直感的で、正確にフロントノーズが反応する。幅の細い4本のダンロップが踏ん張り、基本的にコーナリングはニュートラルだ。

セブンよりハンドリングは良好かも

今回ご紹介するのは、アルミニウム製ボディのロータスMk VI。驚くほど速いわけではないが、コーナーの出口でテールを外に流すだけのパワーはある。ふざけたテールスライドが似合わないにしても、ドライバーに余裕を感じさせてくれる。

特に意識した修正を加えることなく、ベストラインに戻せる。アクセルペダルを緩めると、先の細いフロント側へ重心を移せる。シャシーは鋭く操作に応え、ブレーキも想像以上に良く効く。ハイスピードでのコーナリングに、自信が湧いてくる。

ロータスMk VI(1952〜1957年/英国仕様)
ロータスMk VI(1952〜1957年/英国仕様)

ブレーキは巨大なドラムで、放熱用フィンが放射状に並んでいる。左右でバランスが崩れることもなく、確実に速度を落とせる。ストレートの終わりで思い切りペダルを蹴飛ばしても、フェードする兆候はない。

より距離の長いサーキットなら、印象は変わってくるだろう。しかし車重は420kg。ドライバーが座っても500kg前後だから、大きな違いは生まれなさそうだ。

すべての操作に余計な力は必要としない。速く走らせても思いのほか疲れない。珍しくはない部品を集めたクルマだが、その成果は遥かに上回る。

筆者はロータス・セブンが好きだ。滑らかなサーキットを走らせれば、その先代に当たるMk VIの方が、ややもするとハンドリングは良いかもしれない。認めたくはない事実だ。

鈍く光るアルミ・ボディが生々しいが、その内側には1950年代前半らしい、スペースフレームが隠れている。コーリン・チャップマン氏の仕事から想像する以上に、多くのパイプが用いられている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ポール・ハーディマン

    Paul Hardiman

    英国編集部ライター
  • 撮影

    オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ロータスMk VI ブランドの分岐点 1097ccのクライマックス・ユニットの前後関係

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