メンテナンス費用が安い電気自動車、ディーラーへのダメージ大 英国でEVシフトに抵抗感 アフターサービスの収益減少【UK編集部コラム】

公開 : 2026.07.24 17:05

英国ではEV普及を促進していますが、ディーラーは大幅な利益減につながるとして抵抗感を示しています。EVは内燃機関車よりメンテナンス費用が安く、ディーラーの収益の柱であるアフターサービスを脅かしているためです。

電動化で脅かされる収益の柱

英国で近年、中国の自動車ブランドが大きく躍進している。その成功の陰には、ディーラーの努力がある。BYD、MG、チェリー(奇瑞汽車)などは、消費者の好奇心を販売につなげるには地道な地盤作りが鍵であることを認識し、迅速に販売網の構築に乗り出した。

しかし、ディーラーは新車販売には非常に長けているが、利益の大部分はそこから得ているわけではない。柱となるのはアフターサービスであり、EVはその利益を脅かしているのだ。

EVのメンテナンス費用は内燃機関車よりも安く、ディーラーの利益に影響を及ぼしている。
EVのメンテナンス費用は内燃機関車よりも安く、ディーラーの利益に影響を及ぼしている。

アフターサービスの重要性は、英国の大手ディーラーグループであるVertu社の決算報告書からも明らかだ。それによると、2月末までの1年間において、アフターサービスの売上は会社全体のわずか9%に過ぎなかったが、粗利益はなんと44%という驚異的な割合を占めていた。その中でも、整備業務のみの利益率は73%に達した。一方、新車販売の利益率は8%、中古車販売は7%にとどまった。

EVはこれに大きな打撃を与えるだろう。ディーラーグループのCaffyns社は報告書で、「バッテリー式電気自動車(BEV)は部品点数が少なく、使用するフルード(オイルなど)の量も少なく、ブレーキの劣化も少ないだろう」と述べている。

同社は「バッテリー式電気自動車への移行が加速するにつれ、今後数年間でアフターサービスの収益は減少する可能性が高い」と警告した。

顧客単価を引き上げる動きも

こうした状況を受け、英国のディーラーグループではVertu社が先頭に立ち、政府に対しEVへの移行を遅らせるよう働きかけている。自動車メーカーも英国自動車製造販売者協会(SMMT)を通じて同様の動きを見せている。

しかし、両者とも慎重な行動が求められる。一部の消費者は「EVを買え」と言われることに反発するかもしれないが、メンテナンス費用の節約は乗り換えにつながる重要なメリットの1つである。

英国政府はEV普及を促進しているが、ディーラー側は抵抗感を示している。
英国政府はEV普及を促進しているが、ディーラー側は抵抗感を示している。

ディーラーや自動車メーカーは、EVユーザーから不当に搾取せず、他の正当な収益源を見出す必要がある。従来の整備スケジュールや料金体系に固執し、定期的なブレーキフルードの交換やキーバッテリーの交換といった、内燃機関車の整備を無理やり模倣したような根拠のないサービスをでっち上げるだけでは、EV購入者の心は掴めない。

不吉なことに、Caffyns社は株主らに対し、EV所有台数の増加に対応して「1台あたりの収益を最大化するため、より積極的なアップセル(顧客に対して、より高価格帯の商品を提案すること)を推進する」と約束した。車載ハードドライブのデフラグ(最適化)に料金が発生する日がいつか来るのかもしれない。

自動車メーカーは依然としてディーラーに大きく依存しているため、ディーラーが利益を維持できるよう積極的に関与すると同時に、EVの年間整備費用に目に見える違いを求めている顧客層を苛立たせないようにするという、難しい立ち回りを強いられている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ニック・ギブス

    Nick Gibbs

    英国編集部ビジネス担当記者
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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