というわけで、レガシィは新型でさらに北米最適化（＝さらなる大型化）を進めることにした（それでも全長が4.8mを割っていたのは意外だったが）。それを可能としたのがレヴォーグである。レヴォーグによってレガシィを日本の呪縛から解放し、そのレヴォーグは日本において、かつてのレガシィの地位を取り戻す。レヴォーグは「輸出しないとは決めていないが、日本のために開発した」という基本的には日本専用車。ボディサイズは日本でヒットした4代目レガシィに回帰。まあ、全幅だけは50mm広くなっているが、今の目で見ればギリギリ許容範囲といえるか。

スバルの規模で日本専用車など大丈夫か……と他人事ながら心配になるが、その点についてはさすがに巧妙だ。いわゆるプラットフォームはインプ系と思われる。ただし、上屋は最新の軽量高剛性思想をいれた新設計という。2650mmというホイールベースもインプとほぼ同等で、インテリアは上級モデルとして各部が入念にグレードアップされているものの、ダッシュボードの基本造形はインプに酷似。荷室の前後長は5代目レガシィと実質同寸で、容量は5代目レガシィの520ℓに対してレヴォーグは522ℓ。すなわち、レヴォーグの室内パッケージレイアウトは、大きくいうと、インプのキャビン後端にレガシィと同等のトランクを背負わせたもの……といっていいだろう。

もうひとつの注目は、レヴォーグのホイールベース値や内外装デザインは新型WRXと共通ということだ。レヴォーグをWRXワゴンというべきか、新型WRXをレヴォーグセダンと呼ぶべきか……はともかく、この2台でひとつのシリーズと考えれば、レヴォーグは孤独な日本専用車ではない。

今回は限定された場所でのプロトタイプ試乗ということで、あまり断定的なことはいえないが、その乗り味を既存のスバルにたとえるなら、レガシィというよりインプWRX的。あのレガシィの悠然と滑らかなフットワークとは趣きが異なり、意地悪くいえば、レガシィよりひとクラス下感は明らかにある。

しかし、かわりに硬質な剛性感が印象的で、ステアリングの利きも強力そのもの。ツインリンクもてぎのロードコースを走る2.0GT-S（エンジンは2.0ℓ直噴ターボ）は、路面にグイグイと食いつきながらも、そのグリップ力をもてあました感じがまったくない。それでいて、硬いが滑らかにストロークするフットワークで、同じエンジンとタイヤのレガシィ2.0DITより、一般道での乗り心地は快適に思えるほどだ。スバルのエンジニアがアタマ獲りにいったとき特有の、鬼気せまるオーラがレヴォーグにはただよっている。

レヴォーグに搭載されるエンジンは2種類で、前記の2.0ℓDITに加えて、初出の新開発1.6ℓターボがある。1.6ℓの出力/トルクは2.0ℓのおよそ6割だから絶対的な速さは較べるべくもない。ただ、2.0DITはのけぞるほどの馬鹿力エンジンなので、1.6ℓでも十二分に俊足スポーツワゴンとして通用する。1.6ℓは穏健な17インチタイヤがメイン（2.0ℓは18インチのみ）なので、ごく低速での乗り心地は良好だが、一定以上の速度やGがかかったときのマナーやしなやかさは、18インチに圧倒的に潤いとコシがある。18インチはダンパーにビルシュタインを使う。

(文・佐野弘宗　写真・花村英典)

スバル・レヴォーグ 2.0GT-Sアイサイト/1.6GTアイサイト

価格	330.0万円	257.0万円
0-100km/h	na	na
最高速度	na	na
燃費（社内測定値）	13.2km/ℓ	17.4km/ℓ
CO₂排出量	na	na
車両重量	1560kg	1520kg
エンジン形式	F4DOHCターボ,1998cc	F4DOHCターボ,1599cc
エンジン配置	フロント横置き	フロント横置き
駆動方式	4輪駆動	4輪駆動
エンジン最高出力	300ps/5600rpm	170ps/4800-5600rpm
エンジン最大トルク	40.8kg-m/2000-4800rpm	25.5kg-m/1800-4800rpm
圧縮比	10.6:1	11.0:1
変速機	CVT（スポーツリニアトロニック）	CVT（リニアトロニック）
馬力荷重比	192ps/t	112ps/t
比出力	150ps/ℓ	106ps/ℓ
全長	4690mm	4690mm
全幅	1780mm	1780mm
全高	1490mm	1485mm
ホイールベース	2650mm	2650mm
燃料タンク容量	60ℓ	60ℓ
荷室容量	522ℓ	522ℓ
サスペンション	（前）マクファーソン・ストラット	マクファーソン・ストラット
	（後）ダブルウイッシュボーン	ダブルウイッシュボーン
ブレーキ	（前）Vディスク	Vディスク
	（後）Vディスク	ディスク
タイヤ	225/45R18	215/50R17