アバルト500e 詳細データテスト ほどよい速さと優れた経済性 足回りは硬すぎる 価格は高すぎる

公開 : 2023.08.19 20:25

意匠と技術 ★★★★★★★★★☆

アバルト500eが、フィアット500のEVを速くしたバージョンであるのは明らかだ。つまり、ベースはかつてのFCAがPSAとの合併前に開発したEV用プラットフォームである。本来ならFCAのさまざまなモデルに使用されるはずだったコンポーネンツだ。

しかし、ステランティスの成立で状況は変わり、今後は旧PSAのアーキテクチャーをグループ全体で使っていくことになった。ジープの小型電動クロスオーバーであるアヴェンジャーはe-CMP2がベースで、フィアットが投入する新型600も同様のメカニズムを採用することになる。

電装系のすべてやモーターなどが詰め込まれたフロントに、積載スペースはない。そのぶん、リアにはモーターを積まないので、荷室にはそこそこ深さがある。
電装系のすべてやモーターなどが詰め込まれたフロントに、積載スペースはない。そのぶん、リアにはモーターを積まないので、荷室にはそこそこ深さがある。    SIMON THOMPSON

そのため、フィアットとアバルトの電動500は、今後の発展がない袋小路の技術を用いるクルマということになりそうだが、それはあくまで状況が理由であって、メカニズムに決定的な欠陥があるわけではない。機械面で、もっとも複雑で精巧な部類のEVではないが、ホットハッチのよさは得てしてシンプルさによることが多い。シンプルであるにも関わらず、というよりも。

サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがトーションビーム。スプリングはフィアット版よりハードで、ダンパーも再チューンされている。ホイールはスタンダードな500eが17インチ、ツーリズモが18インチ。いずれもEV用のブリヂストン・ポテンザスポーツを履く。

アバルト版のハードウェアは、フィアット版と大半を共有する。バッテリーは42kWhで、モーターはフロントに1基。35psのアップは、メカニズムの変更ではなく、内部損失の最適化や、単純によりハードな使い方をしたことによって得ている。

合わせて、リダクション比は9.6:1から10.2:1へショート化。多少の効率を犠牲にして、加速性能を高めている。理論上は最高速度も下がるはずだが、155km/hでリミッターが作動するので問題にはならない。

パワーアップと低レシオ化があっても、これが小さなクルマであることに変わりはない。それは、前部が小さく、車重が比較的軽いことにもつながる。テスト車の実測重量は1395kgで、前後配分は58:42。Aセグメントとしては重いが、EVとしては軽いほうだ。

フィアット版との識別点は、ホイールを除けば、よりアグレッシブなフロントバンパーとディフューザーのインサート、サイドスカートだ。また、フィアットではLEDのデイタイムライトとなる眉毛のような部分が、黒いトリムに差し替えられる。

フィアット版で残念だったのは、4色のボディカラーにおもしろみのあるものがないことだ。アバルト版にはより楽しげな、アドレナリンレッドやポイズンブルー、テスト車に塗られたアシッドグリーンなどが用意されている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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