アバルト500e 詳細データテスト ほどよい速さと優れた経済性 足回りは硬すぎる 価格は高すぎる

公開 : 2023.08.19 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆

もしアバルト500eが本当に真のホットハッチとみなされようというなら、ハンドリングは重要項目だ。マニュアル操作のギアボックスも、甘美なサウンドを発するエンジンもそこにはないのだから、なおのことである。しかし、結果は疑問符がつくものだった。

ホイールベースが短く、サスペンションが引き締まっていて、レスポンスに優れたフィアット500は、なかなか悪くない出発点だ。そこにアバルトが、実のある改良を数多く施したのがこの500eだ。

アバルトのステアリングはクイックで一体感を得られるので、かなり自信を持ってフロントを操れるが、硬いサスペンションが生む忙しない乗り心地は、日常的に味わうとうんざりするようなものだ。
アバルトのステアリングはクイックで一体感を得られるので、かなり自信を持ってフロントを操れるが、硬いサスペンションが生む忙しない乗り心地は、日常的に味わうとうんざりするようなものだ。    SIMON THOMPSON

フィアット版の一番の弱点は、生気のないステアリングだが、アバルトのセッティングは手応えもフィールも増して改善されている。どれくらいグリップがあるかを感じられて、前輪が食ってくれることを信じ運任せで走るようなことにはならない。

ギア比はやや速くなり、動きの俊敏さも加わったが、やりすぎるほどではない。ただし、スコーピオン・トラックモードでは、やや操舵が重すぎで、このパワーと回生レベルのままステアリングだけツーリズモモードのパラメーターにしたいところだ。

500eは真っ当な乗用車としては、現在の新車市場でもっとも小さな部類に入る。英国の、生垣に挟まれた狭いB級道路を走るには理想的なサイズだ。言い換えるなら、道幅に余裕が生まれ、障害物や路面の穴を避ける余地も大きく取れるということになる。そうした場所でも、小柄さを生かし飛ばして楽しむことができる。

アバルトにとって不都合なのは、平均的なB級道路にはバンプが多すぎることだ。そうなると、500eはやや路面を扱いあぐねる場合が出てくる。スプリングもダンパーも硬めで、サスペンションのトラベルもさほど大きくないので、結果として忙しない乗り心地が続いてしまう。

それが本格的な問題になるのは、かなり劣悪な舗装の道路においてだが、不意にそういう状況に出くわすと、ドライバーは自信を挫かれる羽目になる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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