なぜ、Nボックスは売れ続ける? 新型に試乗 ホンダでは珍しい「熟成」で勝負に

公開 : 2023.10.05 11:34

ついに新型「ホンダNボックス」発売。フルモデルチェンジ車に試乗し、売れ続ける理由と、開発陣のチャレンジを探ります。

歴代の魅力 3つの要素とは

クルマがモデルチェンジをするのはなぜか。時の流れとともに鮮度が薄れ、販売台数が低下することが理由のひとつだろう。ところがホンダNボックスは、2代目となる現行型は2017年9月発売なので、すでに6年が経過しているのに、今年上半期のベストセラーカーになっている。

いまだに多くの人に支持されているのはなぜか。個人的にはデザイン、パッケージング、走りの3要素が高次元で両立していることが理由だと思っている。

10月6日発売される新型Nボックスに試乗。写真は標準型のファッションスタイル(174万7900円/FF/オータムイエローパール)。
10月6日発売される新型Nボックスに試乗。写真は標準型のファッションスタイル(174万7900円/FF/オータムイエローパール)。    宮澤佳久

多くの軽自動車スーパーハイトワゴンと同じように、Nボックスもターゲットユーザーは子育て世代の母親だった。でもデザインはジェンダーフリー&エイジフリーであり、結果として幅広いユーザーが積極的に選びたくなるクルマになった。

しかも前席下に燃料タンクを置いた、ホンダお得意のレイアウトのおかげで、自転車さえ積み込める広く使いやすい室内空間を実現した。

走りについては、軽自動車のレベルを超えた高速道路での安定感、現行型では全タイプ標準装備の先進運転支援システムのおかげもあって、片道100kmぐらいなら余裕でこなせるロングラン性能を備えている。

こうなるとしばらくモデルチェンジなしでもいけそうだが、ホンダはNボックスを3代目に進化させ、10月に発売することにした。

きっかけは交通/ユーザーの変化

それを前にテストコースで行われた事前試乗会では、この6年間でニーズが変わったことを、モデルチェンジの理由に挙げていた。

具体的には高速道路の一部区間で最高速度が120km/hになったほか、センシングやコネクティビティの技術が進化し、ユーザーが求めるレベルもアップしたことを挙げた。

新型Nボックス・カスタム・ターボ・コーディネートスタイル(222万9700円/FF/2トーン/スレートグレーパール )
新型Nボックス・カスタム・ターボ・コーディネートスタイル(222万9700円/FF/2トーン/スレートグレーパール )    宮澤佳久

一方でプラットフォームやパワートレインは2代目で一新し、ライバルを凌駕する出来だったこともあり、今回は継承している。

グランドコンセプトは、従来からの価値を磨く「ずっと大切に」という側面と、クルマとしての価値を拡げる「もっと楽しく」の両面を追求した、「HAPPY Rhythm BOX」というキーワードにまとめた。

ボディは標準車とカスタム、エンジンは自然吸気とターボというバリエーションは変わらないが、標準車とターボエンジンの組み合わせはあまり売れなかったようで、新型ではターボはカスタムのみになった。

デザイン・内装 注目すべきは?

デザインもエクステリアについては、人気の源泉でもあったので、大きくは変わっていない。

ただし前後のフェンダーの張り出しは穏やかになり、カスタムはクロームメッキが控えめになり、標準車のグリルがパンチング加工となるなどの違いはある。全体的に落ち着きを増した印象だ。

新型Nボックス・カスタム(184万9100円/内装色ブラック)
新型Nボックス・カスタム(184万9100円/内装色ブラック)    宮澤佳久

対照的にインテリアは変わった部分が多い。

もっとも目立つのがメーターで、2代目ではインパネ奥から盛り上がるように置かれ、ステアリングの上から見る形だったのに対し、新型は水平基調のインパネ内にコンパクトに埋め込まれ、ステアリングのリム内から見る一般的な場所になった。

最近のホンダ各車が心がけている視界へのこだわりも取り入れており、フロントウインドウ下端はほぼ水平で、ドアガラス下端と揃えてある。

全体的にすっきりした印象だが、標準車ではコルク、カスタムでは石皿を思わせる質感のトレイを加えるなど、クオリティへのこだわりも感じられる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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