2024年の日本発売へ期待 ジープ・アベンジャーへ試乗 他に埋もれない個性 ハイブリッド版も

公開 : 2023.11.14 19:05

想像以上に運転が楽しい 他に埋もれない個性

eCMP2を採用するモデルとしては、着座位置を低く抑えたことで、前後席とも頭上空間にはゆとりがある。定員は5名だが、リアシートに大人が3名並んで座るには、我慢が必要だろう。前席側は居心地が良い。荷室容量は355Lだ。

内装は、フィアットプジョーとの共通点を感じ取れるものの、頻繁にクルマを乗り換えることがなければ気にならないはず。先述の鮮やかな内装トリムは、750ポンド(約14万円)のオプション。これがなくなると、少し薄味に感じられるかもしれない。

ジープ・アベンジャー(欧州仕様)
ジープアベンジャー(欧州仕様)

運転席へ座ると、スクエアな形状だけにボディ四隅の位置を把握しやすい。外界の視認性も良く、全幅は1776mmと全長の割にワイドだが、車線の中央を維持しやすい。

期待を込めて発進させると、アベンジャーは想像以上に運転が楽しい。数多いコンパクトSUVに埋もれない、個性がある。

スポーツカーのような一体感までは得ていないが、それは当然だろう。ジープの技術者が、欧州市場を見据えて思慮深く開発したという事実が滲み出ている。

今回始めてグレートブリテン島の一般道を走らせたが、カーブが連続する区間でも安定感は高い。パワーデリバリーはスムーズで、156psの駆動用モーターは必要とする力を不満なく発揮する。

回頭性は意欲的で、引き締まった姿勢制御と優れたグリップ力が相乗し、コーナーを安定して駆け抜けていく。ただし、ステアリングホイールの感触は人工的で、切り始めには不自然なバネ感も伴った。

悪路性能も高い 好調に売れても不思議はない

複数のドライブモードが用意され、Bモードでは回生ブレーキが強くなるが、もう少し利いても良いかもしれない。エコ・モードでは、最高出力が82psへ制限される。非力に感じられるため、出番は少なそうだ。

ノーマル・モードは108psまで開放され、スポーツ・モードで本領の156psが発揮される。ほかにスノー・モードと、サンド&マッド・モードも用意され、電子アシスト量も変化する。

ジープ・アベンジャー(英国仕様)
ジープ・アベンジャー(英国仕様)

試乗車は18インチ・アルミホイールを履いていたが、乗り心地も良好と呼べるレベル。ただし、速度域を問わず小さな揺れが残る。片側2車線の幹線道路でも、落ち着きは得にくいようではあった。DS 3 Eテンスの方が、滑らかさでは勝ると思う。

今回はオフロードを試せなかったものの、前回のデモ走行の限り、悪路性能はかなり高い様子。急勾配を低速で安定して走行できる、ヒルディセント・コントロールも標準で実装する。

総じて、アベンジャーの訴求力は高い。見た目は好印象だし、実用性も充分。ブランドに相応しい悪路性能を、電動パワートレインで叶えてもいる。3万5700ポンド(約646万円)の価格に見合う、上質さは薄いかもしれないが。

ジープは、これほど欧州市場に適したモデルを、過去に提供したことはなかった。ディーラー網の制限はあるとはいえ、アベンジャーが英国で好調に売れても不思議ではない。

次世代のジープをリードするモデルだと、同社は主張する。小さな電動SUVが、力強く牽引してくれるのではないだろうか。

◯:力強く新鮮なスタイリング 不足ない航続距離 市街地での扱いやすさ
△:少々硬めの乗り心地 狭めの後部座席と荷室

ジープ・アベンジャー(英国仕様)のスペック

英国価格:3万5700ポンド(約646万円)
全長:4084mm
全幅:1776mm
全高:1528mm
最高速度:149km/h
0-100km/h加速:9.0秒
航続距離:384-408km
電費:6.2km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:1536kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:51.0kWh(実容量)
急速充電能力:100kW(DC)
最高出力:156ps
最大トルク:26.4kg-m
ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事

 

ジープの人気画像