帰省中の貴方 出発前に是非再確認を チャイルドシート使用でも死傷する間違った使い方とは

公開 : 2024.01.02 07:05

12月に静岡県で発生した正面衝突事故で「チャイルドシートを使用してした1歳児が死亡」と各メディアは報じていますが「チャイルドシートをただ使う」だけの落とし穴を、取材を通じて考察します。

静岡県河津町で起きた1歳児死亡事故とは

事故が起きたのは12月24日午後4時頃。場所は静岡県賀茂郡河津町見方2316-5先の路上(国道135号線)で、軽乗用車と普通乗用車の正面衝突事故であった。

帰省中の39歳無職の女性が運転していた軽自動車が対向車線にはみ出して普通乗用車と衝突。軽乗用車の助手席に座る5歳女児は腹部に重傷を負い、後席の1歳男児は頭を強く打って病院に搬送されたが死亡が確認されている。対向車の普通乗用車には50代の男女2名が乗っていたが軽傷だった。

「チャイルドシートの1歳児なぜ死亡」
チャイルドシートの1歳児なぜ死亡」

この事故に関しては多くのメディアが報道しているが、ニュースのタイトルに多く使われているのが「チャイルドシート使用の男児死亡」/「後部座席のチャイルドシートに座る1歳児死亡」など、チャイルドシートを使用していたことが全面にアピールされている「チャイルドシートは後部座席に固定され男の子はベルトをしていた」という報道もある。

しかし、男児は大変残念なことに「頭を強く打って」搬送先の病院で死亡が確認されている。このニュースを見た人の中には「チャイルドシートを使っていたのに亡くなった? チャイルドシートに欠陥があるのではないか!」と考える人もいるかもしれない。

結論から言うと、ECE R44/04またはR129の安全基準を満たして子どもの体格に合っているチャイルドシートを「正しく」使用しており、さらには事故の被害者である大人3人が全員軽傷という状況であればチャイルドシートの中の1歳児が頭を強く打って亡くなることは可能性としては非常に低い。

車外に飛び出したのではないが…

チャイルドシートに座る1歳児が「頭を強く打つ」状況とはどういうことなのだろうか?

可能性としては子どもの体を拘束するハーネス(チャイルドシート本体についているベルト)が緩くてスピンした衝撃でハーネスの間からすり抜けて、床に転げ落ちて頭を打ったことがまず推測される。

チャイルドシートメーカーの技術者いわく

「チャイルドシートの1歳児なぜ死亡」
「チャイルドシートの1歳児なぜ死亡」

「死亡原因といわれている頭部への強い衝撃については、チャイルドシートの向きが関係しているように思いますね。運転していた母親と相手側の大人2人が軽傷ですから、大人にとっては耐えられるレベルの衝撃だったのかなと考えられます。

1歳のお子様に関しては体格に合わない早過ぎる前向き乗車が原因で、頭部が強い力で前方に投げ出されたことが亡くなられた原因ではないかと考えられます。助手席の5歳のお子様が重傷との事ですが、恐らくジュニアシートで適切な位置に腰ベルトが掛からず、お腹に食い込んだことが理由ではないでしょうか?」

なお、警察の発表では軽乗用車の車種、チャイルドシートのタイプや、前向きか後ろ向きかなどは一切明らかにされてない。また「1歳男児」としか書かれておらず、満1歳になったばかりなのか、もうすぐ2歳なのかも不明。

1年違えば体格も大きく違ってくる。R129アイサイズ基準のチャイルドシートであれば、生後15か月と身長76cmを超えるまでは後ろ向き使用がマストになる。報道では「車外に飛び出した人はいなかった」とあるので、頭を打った先はクルマの中になるのだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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