感動モノ!の8速AT トヨタGRヤリス ラリー2の戦闘力を高める「エボ」へ試乗 フィンランドが第2の故郷

公開 : 2024.03.19 19:05

ラリー2カテゴリーの戦闘力を高める進化

トヨタのガズーレーシングには、現場で戦い鍛え上げるという理念がある。GRヤリスのプロトタイプが届いた時、ラトバラには壊れるまで走るよう伝えられたとか。

「限界までプッシュしました。ここから遠くないグラベルを全開で飛ばしていた時に、大きくジャンプ。リアアクスルを曲げてしまいましたが、彼らは、それを見て喜んでいましたよ」

トヨタGRヤリス(欧州仕様)
トヨタGRヤリス(欧州仕様)

フェイスリフトを受けたGRヤリス「エボ」には、多くのアップデートが施された。サスペンションだけでなく、新たに得た3ピース構造のバンパーや堅牢なピストンなどは、これまでしっかり壊されてきた証拠といえる。

WRCマシンの経験から、直接取り入れられたものもある。「ラリーカーでは、シートポジションはできるだけ低い方が良い。なので、ロードカーも低くしました」。ラトバラが続ける。

「ドライブモードも、マッピングを変えています。グラベルモードでは、もっとフロントアクスルの引きが欲しいと感じたんです」

GRヤリス「エボ」のドライブモードは、ノーマルとグラベル、トラック(サーキット)の3つ。前後のトルクバランスは、順に60:40と、53:47、60:40〜30:70の可変という設定になった。

現在のWRCには、特注シャシーも許容されるラリー1と、市販車ベースのラリー2というカテゴリーに別れている。後者には車両価格にも上限が設定され、ロードカーのGRヤリスの進化は、その戦闘力を高めるうえで重要となる。

どんな状況でも最適なギアを選ぶ8速AT 

ラリー2マシン用のボディシェルは、強化される前に、通常の生産ラインから抜き取られる。1.6L 3気筒ターボエンジンも、ロードカーのものがベース。参戦チームからの人気は高く、既に50台が売れており、今注文しても届けられるのは2025年だとか。

さて、セドリックから熱い指導を受けた筆者は、従来のGRヤリスから新しい「エボ」へ乗り換える。パワーとトルクが増え、ドライビングポジションが改善したことを、彼が強調する。どんな状況でも最適なギアを選ぶ、8速ATの仕上がりも称賛する。

トヨタGRヤリス(欧州仕様)
トヨタGRヤリス(欧州仕様)

まだ量産仕様ではなかったが、発進してすぐ、セドリックが褒める理由がわかった。トルクが増えたことで、明らかにGRヤリスは速い。ステアリングの反応は、より鋭敏でダイレクト。ドライビングポジションも自然。テールスライドを、快適にこなせる。

8速ATは感動モノ。激しい加速時にはしっかりギアが保持され、パワーを路面へ展開。望まないタイミングでは、一切変速しない。ギアの選択に追われることなく、フィンランド人のように、凍った湖の上でも思い切り駆け回れる。

とはいえ、筆者はプロの足元にも及ばない。ラトバラのドライブで、テストコースを1周してもらった。まるで身体の延長のようにGRヤリスを扱い、ステアリングホイールと3枚のペダルを自在に操る。さも当然のように。

GRヤリスは、こんな環境で鍛えられた。秀でた能力を宿していても、不思議ではない。

トヨタGRヤリス(欧州仕様)のスペック

英国価格:3万5000ポンド(約662万円/予想)
全長:3995mm
全幅:1805mm
全高:1455mm
最高速度:233km/h(予想)
0-100km/h加速:5.1秒(予想)
燃費:13.8km/L(予想)
CO2排出量:185g/km(予想)
車両重量:1280kg
パワートレイン:直列3気筒1618cc ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:280ps/6500rpm
最大トルク:39.7kg-m/3250rpm
ギアボックス:8速オートマティック(四輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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