フォード・マスタング50周年エディション

公開 : 2014.12.22 23:50  更新 : 2021.10.11 09:10

314psの直列4気筒ターボ・エンジンは、ほとんどターボ・ラグを感じさせることなく、あたかも大排気量の自然吸気エンジンを扱っているかのような印象で、スムーズな加速を演出してくれる。全長×全幅×全高で4790×1920×1380㎜、車両重量では1660kgというのがサイズ面での主要なデータだが、それに対しては十分な動力性能と評価できそうだ。6速ATのフィーリングも素晴らしい。セレクトシフト・モード=マニュアル・モードをチョイスすれば、シフトダウン時にはオートマチックでエンジン・スピードを合わせる、レブ・マッチング・ダウンシフト機能が働き、常にスムーズなシフトダウンを実行することができる。これならば、マスタングがわずか2.3ℓという排気量の直列4気筒エンジンで走る時代になったことに、残念な気持ちを抱いていたカスタマーも、十分に満足できるに違いない。

一方で、”50 YEARS EDITION” の大きな特徴でもある、パフォーマンス・パッケージによるサスペンションの動きには、やや不満が残ったのも事実だった。19インチ径のタイヤは、低速域では特にその重量感がダイレクトに伝わるし、路面の状況によっては乗り心地のみならず、スタビリティにもこのフットワークは影響を与えている。先代比で28%もの強化が果たされたねじり剛性。そして前でも触れたとおりの、独立式リア・サスペンションの採用。マスタングのフットワークの潜在能力は、本来はより魅力的なのではないか。その印象は最後まで払拭できなかった。あるいはこのモデルが真の実力と魅力を披露するのは、サーキットなどの舞台ということか。

EPAS=電動パワー・ステアリングのセッティングを、ノーマル、スポーツ、コンフォートから独立して選択できるのは面白い。さらにこのEPASには、路面のうねりや横風の影響に対しての微調整を行う、ドリフト補正機能。そしてステアリング・ホイールの微妙なブレや振動を打ち消す、アクティブニブル・コントロール機能なども搭載されるが、走行中にその制御はほとんど意識させられることはない。それほどに自然な制御ということだ。

■「買い」か?

とにかく新型マスタングの上陸を待ち望んでいたのだというファンには、350台限定というプレミアム性を含め、このファーストモデルは魅力的な存在だろう。装備レベルを考えれば、コスト・パフォーマンスは十分に高い。ただし将来的には、日本仕様は右ハンドル化されることを忘れてはならない。この時に実用性はさらに大きく高まるからだ。参考までに新型マスタングの日本仕様は、最終的にはクーペとコンバーチブルに、各々直列4気筒とV型8気筒がラインナップされる予定だという。

(文・山崎元裕 写真・花村英典)

フォード・マスタング50周年エディション

価格 4,650,000円
最高速度 250km/h
0-96km/h加速 5.4秒
燃費 NA
CO2排出量 NA
乾燥重量 1660kg
エンジン 直列4気筒2260ccターボ
最高出力 314ps/5500rpm
最大トルク 44.3kg-m/3000rpm
ギアボックス 6速マニュアル

記事に関わった人々

  • 山崎元裕

    Motohiro Yamazaki

    1963年生まれ。青山学院大学卒。自動車雑誌編集部を経て、モータージャーナリストとして独立。「スーパーカー大王」の異名を持つ。フツーのモータージャーナリストとして試乗記事を多く自動車雑誌、自動車ウェブ媒体に寄稿する。特にスーパーカーに関する記事は得意。

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