「ボルボだけ」を解体する個性派スクラップヤード 電話が鳴り止まない「人気」の秘密はオーナーにあった

公開 : 2024.07.29 11:05

英国の静かな田舎に、古いボルボ車を専門に取り扱う風変わりなスクラップヤードがある。ボルボに関するオーナーの知識と記憶力が圧倒的で、取材中も顧客からの電話対応に追われていた。

英国の個性的な自動車解体業者

英国にレイク・オートス(Lakes Autos)という、他とは一味違ったスクラップヤードがある。東部ベッドフォードシャー州の村、ワイボストンのA1幹線道路から見える。

周辺は風光明媚とは言い難いが、廃棄されたクルマがひしめき合うレイクスの様子は、錆びた金属ではあるものの一種の太古の森のようだ。英国では最近、このような場所はあまり見かけない。

レイク・オートス(Lakes Autos)
レイク・オートス(Lakes Autos)    AUTOCAR

業界の浄化を目的とした新しい規制によって、小規模な自動車解体業者の多くが閉鎖を余儀なくされ、いかがわしい業者は日陰に追いやられた。レイクスは数少ない昔ながらのスクラップヤードの1つとなったが、その事業内容は少しだけ特殊だ。ボルボ車だけを取り扱っているのだ。

約5万6000平方メートルに及ぶ敷地を見て回ると、まるで過去にタイムスリップしたような気分になる。解体されていくクルマはおそらく400台以上あり、ボルボの960、940、740、850、さらにクラシックな244 DLまである。ボルボの黄金時代を彷彿とさせる光景だ。

なぜボルボを専門に取り扱うのか?

レイクスのオーナーはバリー・コッペンさん。77歳の彼は、今はもう亡くなった2人の兄弟とともに、以前この場所にあったガソリンスタンドとガレージ、そして周囲の土地すべてを父親から受け継いだ。

コッペンさんはロンドンで生まれ、エンジニアとしての教育を受け、超音速旅客機コンコルドの初期プロトタイプやジェット戦闘機ジャギュアの開発に携わった。その後、自動車産業に足を踏み入れた。30年前に両親を亡くし、兄弟とともに父の経営していた会社に移ったが、すぐに野心が芽生えた。

広大な敷地に並ぶ古いボルボたち。部品取りのために少しずつ解体されていく。
広大な敷地に並ぶ古いボルボたち。部品取りのために少しずつ解体されていく。    AUTOCAR

「この辺りには10ほどのスクラップ工場があり、スペアパーツを売るために競ってクルマを集めていました。わたしは1つのメーカーに集中することに決め、ボルボを選びました。ボルボは頑丈で、オーナーはできる限り長く走らせたいと考えていたからです」とコッペンさん。

レイクスの眼の前には、イングランドを南北に走るA1幹線道路がある。現在は片側2車線だが、コッペンさんがスクラップヤードを始めた当時はまだ片側一車線だったそうだ。「トラックを見かけるのも10分に1台程度でしたが、わたし達が回収・販売する部品を求めるお客さんは後を絶ちませんでした」

「商売は順調でした。5年前、兄弟が病気になってからはガレージとガソリンスタンドを閉鎖して、ボルボを解体して売ることに専念したんです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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