スグレモノなフォルクスワーゲンID.7 2モーターで339psの「GTX」へ試乗 高バランスな電動GT

公開 : 2024.09.11 19:05

完成度の高い電動サルーン、ID.7にツインモーターのGTX登場 高速グランドツアラーとして訴求力プラス 運転体験でベースとの差は限定的 多くの競合より高バランス 英編集部が評価

高速グランドツアラーとして訴求力プラス

フォルクスワーゲンは2021年に、バッテリーEVへGTXという新グレードを設定した。電動版GTIになると予想されていたが、現実はそれに匹敵する楽しさを獲得できていなかった。

最近、同社は電動のGTIへ言及しており、GTXは交代する流れにあるようだ。だとしても、新しいID.7 GTXはグランドツアラーとしての訴求力を、確実に向上させている。

フォルクスワーゲンID.7 GTX(欧州仕様)
フォルクスワーゲンID.7 GTX(欧州仕様)

そもそも、ID.7は完成度が高かった。AUTOCARでは、2024年のベストサルーンに選出したほど。上質で、クルマとしてのバランスに優れている。これをベースに走りを磨いたGTXへ、今回は試乗してみたい。

ID.7 GTXの概要を確認していくと、リア側に286psの永久磁石同期モーターを搭載。フロント側に108psの非同期モーターが追加され、四輪駆動となっている。

このサルーンを走らせるのは、主にリア側。フロント側は必要時にしか働かず、休止中の効率を踏まえて、非同期ユニットを採用したという。

システム総合での最高出力は339ps。テスラモデル3 パフォーマンスは466psだから、目立って速いわけではない。

だがID.7 GTXの特長は、大パワーにはない。プログレッシブ・ステアリングは改良を受け、フィーリングを改善。ダイナミックシャシー・コントロール(DCC)と、電子制御のリミテッドスリップ・デフも調整を受けている。

駆動用バッテリーも異なる。容量は通常のID.7 プロSと同じ86kWhだが、13モジュール構成の別ユニットで、航続距離はサルーンで595km。ステーションワゴンは、空力特性などが影響し584kmと僅かに短い。

ボディは差別化 専用シートにレッド・ステッチ

スタイリングも差別化されている。フロントバンパーは、グロスブラックのエアインテークが備わる専用デザインで、デイライトの形状も異なる。VWのロゴにはイルミネーションが内蔵され、柔らかく光る。

真一文字のテールライトも、GTX独自のデザイン。立体的に光り、点灯パターンは複数から選べる。ハニカムグリル風のガーニッシュと、ディフューザーも追加された。

フォルクスワーゲンID.7 GTX(欧州仕様)
フォルクスワーゲンID.7 GTX(欧州仕様)

アルミホイールは、20インチが標準。試乗車のように、オプションで21インチも指定できる。

車内空間は、基本的には通常のID.7と大きくは違わない。しかし高性能なGTXとして、要所要所がアップグレードしてある。

エルゴアクティブという名のフロントシートは、上質なマイクロファイバーで仕立てられたGTX専用。背もたれにはレッドのアクセントが施され、ロゴもあしらわれる。ステアリングホイールなども、レッドのステッチで飾られる。

小さめのメーター用モニターは共通。ヘッドアップ・ディスプレイに、主な情報が投影される。アップル・カープレイとアンドロイド・オートとの連携が深まり、ナビの情報も投影可能になった点は特筆すべきだろう。

ダッシュボード中央には、15.0インチのインフォテインメント用タッチモニター。多くの車載機能のインターフェイスになっているが、レイアウトはわかりやすく、メニューも操作しやすい。

長距離走行を想定するだけあって、車内は快適。適度な高級感があり、運転姿勢は低めで落ち着く。筆者は、SUVのそれより好きだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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