改良版 フォルクスワーゲン・ゴルフ GTIへ試乗 「日常と非日常」の対応力強化 でもMk7が良い?

公開 : 2024.08.17 19:05

8代目ゴルフ GTIがフェイスリフト EA888型は265psへ増強 電子制御LSDが標準装備 インフォテインメントの操作性は大改善 客観的には7代目より優秀 英国編集部が評価

もっと上を目指せると感じた8代目GTI

8代目フォルクスワーゲン・ゴルフ GTIへかかる期待は、ホットハッチ最古参の1車種として当初から大きかった。家族ユース前提の実用性と、現実的なランニングコスト、スポーツカーに匹敵する走り、一定の特別感を高次元で叶えるモデルは極めて少ない。

初代の登場は1976年。ほぼ半世紀の間に、200万台を超えるゴルフ GTIが世界中へ届けられている。世代によって評価に多少の浮き沈みはあったものの、先代の7代目は歴代最高水準に仕上がっていた。

フォルクスワーゲン・ゴルフ GTI(英国仕様)
フォルクスワーゲン・ゴルフ GTI(英国仕様)

8代目も、単体で見れば素晴らしい内容にある。実用的で速く楽しい。それでもAUTOCARは、ホットハッチの理想像へ1歩届いていないと判断している。

インフォテインメント・システムは、ソフトウエアの安定性とインターフェイスのデザインが今ひとつ。動力性能は高まったものの、サスペンションも同時に強化され、甘美なバランスが崩されていた。もっと上を目指せると感じた。

ただし、フェイスリフト後に本当の輝きを得てきたのが、歴代のゴルフ GTIでもある。8代目も、2024年に技術者による手が加えられた。高いハードルは、クリアできただろうか。仕上がりを確かめてみよう。

EA888型は265psへ向上 電子制御LSDが標準装備

ゴルフのスタイリングは、初代からの進化というアプローチで成功してきた。1974年の初代と2024年の8代目は、同じ系譜にあることがわかる。リアウインドウのラインや太いリアピラー、水平基調のフロントマスク、シンプルな面構成。ちゃんとゴルフだ。

GTIとしても同様。レッドが差し色で用いられ、随所にGTIのロゴがあしらわれ、マフラーは2本出し。通常よりインチアップしたホイールが、違いを静かに主張する。控え目な差別化こそ、魅力の1つだろう。

フォルクスワーゲン・ゴルフ GTI(英国仕様)
フォルクスワーゲン・ゴルフ GTI(英国仕様)

小改良では、前後のライト類やバンパーのデザインを変更。5代目が履いていたような、テレダイヤル風の19インチ・ホイールが新設定された。フロントグリルのVWエンブレムは、イルミネーションで光る。

エンジンは、EA888型を名乗る2.0L 4気筒ターボ。最高出力は244psから265psへ引き上げられた。GTI クラブスポーツを指定すれば、296psへ強化される。他方、後期型では6速MTが廃盤に。7速デュアルクラッチATのみの設定になった。

サスペンションは、前がマクファーソンストラット式で、後ろがマルチリンク式。通常のゴルフからスプリングレートは前で5%、後ろで15%強化され、車高は15mmダウンしている。

オプションの、ダイナミック・シャシー・コントロール(DCC)へ組まれるアダプティブダンパーもアップデート。タッチモニターを介して、減衰特性を任意に変更できる。ステアリングレシオは7%クイックになった。

フロントアクスルには、電子制御の「XDS+」リミテッドスリップ・デフが標準装備。従来は、オプション設定だった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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