四輪駆動を得た4代目の究極:ゴルフ R32 ブッソV6のFF:147 GTA 初代から5代目 比較試乗(4)

公開 : 2024.09.21 17:45

フェラーリV8へ迫るソウルフルなサウンド

実際にステアリングホイールを握ってみれば、荷重移動しやすく、リアアクスルが軽快に動く。乗り心地は硬すぎず、R32より間違いなく快適といえる。

ただし、パワフルな147 GTAは前輪駆動。ホットハッチとして、普段以上のリスペクトが欠かせない。アクセルペダルを踏み込む場合は、ステアリングホイールをしっかり握っている必要がある。

アルファ・ロメオ147 GTA(2002〜2005年/英国仕様)
アルファ・ロメオ147 GTA(2002〜2005年/英国仕様)

路面が平滑なら、フェラーリのV8エンジンへ迫るソウルフルなサウンドを放ちながら、250psの大パワーが繰り出される。そこでの速度上昇は、猛烈そのもの。

ただし、操舵中に思い切り右足を蹴飛ばすのはNG。路面が荒れている場合も、加減が必要だろう。トルクステアが表出し、ラインは大幅に乱れてしまう。制御不能になるほどではないが、パワフルな後輪駆動モデルと同等の気遣いが求められる。

四輪駆動のゴルフ R32は、もっと気ままでOK。フロントとリアへトルクが分配され、条件にとらわれず、即時的な加速を得られる。超がつくほど鋭敏なアクセルレスポンスも、そんな印象を強化する。

カーブでは、出口が見えた瞬間から右足へ力を込められる。VR6のサウンドは、Mk3時代から磨かれ、興奮度を増している。スペック表では147 GTAの方が速くても、現実世界ではゴルフ R32の方が間違いなく勝る。今回揃えた10台の中でも、最速だろう。

「スーパー」ホットハッチを予見していた

完璧ではない。内装の品質は高いものの、華々しい147 GTAのインテリアデザインには敵わない。シートの豪華さでも、見劣りしてしまう。乗り心地はハードで、クラッチペダルは重すぎる。

大パワーを受け止めるシャシーながら、1477kgの車重を軽くは感じさせない。柔軟に屈伸するサスペンションを活かし、コーナーを踊るように旋回させて楽しむタイプではない。路面を制圧するように、剛腕で突き破っていく。

フォルクスワーゲン・ゴルフ R32(Mk4/2002〜2003年/英国仕様)
フォルクスワーゲン・ゴルフ R32(Mk4/2002〜2003年/英国仕様)

そんなゴルフ R32より長い期間、アルファ・ロメオは147 GTAを生産した。しかし、販売数は半分程度に留まった。

V6エンジンの印象は素晴らしく、並べてみればデザインもダイナミックだと思う。しかし、巨大なエンジンを小さな前輪駆動のハッチバックへ押し込んだ、荒々しい体験は当時でも少し前時代的なものといえた。

むしろ、これが楽しいと評価する、アルファ・ロメオ・ファンの気持ちは理解できる。それでもこの2台で、市場争いを一歩進めたのはフォルクスワーゲンだった。新世代の「スーパー」ホットハッチを予見するように。

僅か1年間のみ提供されたR32だが、この登場で、ゴルフは再び強い人気を獲得した。1980年代のゴルフ GTIに匹敵する興奮を、ドライバーへ提供した。ゴルフ Rの起源でもあり、新時代の幕開けにも繋がった。

落ち着いた雰囲気に、優れた実用性と現実的なパフォーマンス。多くの人への、ベスト・ソリューションだったといえるだろう。

協力:ブライアン・スミス氏

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ゴルフ 初代から5代目 比較試乗の前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事