中国格安ブランドのグローバル展開、背後にステランティスの支援 売上「共食い」懸念はないのか

公開 : 2024.10.09 18:05

中国の新興EVブランド、リープモーターはステランティスの支援を受けて欧州、オセアニア、中東などグローバルに事業を展開する。航続距離1000kmを超える「長距離EV」の欧州導入も計画中だという。

急成長と開発能力を買われて

中国の新興EVメーカー、リープモーター(Leapmotor)が欧州市場に参入した。後ろ盾となるのは欧米系自動車大手のステランティスだ。

リープモーターは手頃な価格のEVを展開するが、プジョーシトロエンフィアットなど、ステランティスの傘下ブランドと「共食い」になることはないという。むしろ、「新たな機会」につながると、同社CEOのティエンシュ・シン氏は語っている。

リープモーターT03
リープモーターT03

「リープモーターはいくつかの理由から、ステランティスの14のブランドを補完するものと考えています。第一に、リープモーターは純粋なEVブランドであり、中国発であること。第二に、ステランティス・グループが(技術面で)持っているものを補完するものであること。第三に、グループ内における同ブランドの位置づけです」

「テクノロジーに精通した顧客、おそらくテクノロジーを好む若い顧客層にとっては、たくさんの機能があります。携帯電話の操作と同じで、非常に多くの機能があります。その観点から、顧客によって好みは異なります」

ステランティスは、リープモーターと共同で設立した合弁会社リープモーター・インターナショナル社に15億ユーロ(約2400億円)を投資している。その広大なグローバル事業を活用して、欧州、オセアニア、東南アジア、インド、南米、中東、北アフリカでブランドを展開しており、今年の販売台数を25万台、2030年には50万台まで増えると見込んでいる。

「最先端のテクノロジーとリープモーターの過去数年間の急成長、さらに社内の強力な垂直R&D能力と品質が、この戦略的提携を構築する決め手となりました」

このテクノロジーの鍵となるのが、リープモーターの「セル・ツー・シャシー」構造であり、EVのバッテリーレイアウトを改善し、乗員の居住空間を拡大し、(乗り心地とハンドリングに有利な)ねじれ剛性を高めるとされている。将来的には、他のステランティスブランドとの相乗効果も期待できるという。

シンCEOはステランティスの前身であるPSAの元幹部で、ステランティス・チャイナ(中国部門)でも要職に就いていた。同氏が率いるリープモーター・インターナショナルは、すでに発表されている「T03」と「C10」に続き、さらに3車種のEVを欧州で発売する計画だ。

同氏はまた、「航続距離1000km」のEVに対する大きな潜在需要があるとして、航続距離延長型EV(EREV)技術を欧州に導入する「計画もある」とAUTOCARに語った。

C10のEREVバージョンはすでに中国で販売されており、1.5Lのガソリンエンジンを搭載し、中国のテストサイクルで1190kmの航続距離を誇る。

C10は中国のリープモーター工場で生産されるため、EU域内への輸入関税が21%かかる見込みだ。しかし、T03はポーランドのステランティス工場で、かつてのフィアット500の生産ラインを利用して生産されることから、価格は中国市場向けとほぼ同じになるようだ。

シンCEOは、T03をEU域内で生産することが、将来の関税に対する保険に過ぎないという一部の主張を否定し、次のように語った。

「当社のターゲット層を見ると、顧客は価格に非常に敏感です。生産を現地化することで最も大きく削減できるのは、輸送コストなのです」

「すべての決定は、1つの要素だけでなく、総合的なビジネスケース評価に基づいて行われます。そして、最終的な目的は、世界中の顧客にモビリティ・ソリューションを提供することです」

記事に関わった人々

  • クリス・カルマー

    Kris Culmer

    英国編集部ライター
  • 林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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