F1を守るアストン マーティン ヴァンテージとDBX707 「裏方」敏腕ドライバーへ聞く

公開 : 2025.08.01 19:05

レーシング・グリーンに塗られたアストンのF1サポートカー レーシングドライバーの経験は不可欠 生体認証データも確認可能 優れた状況判断力も試される UK編集部が裏方ドライバーへ迫る

レーシング・グリーンのF1サポートカー

2025年のF1は、序盤から手に汗握る展開が繰り広げられているが、ドライバーが全力を発揮するうえで、舞台裏の体制は極めて重要。万が一に備えて、セーフティーカーとメディカルカーが控えている。現在は、アストン マーティンも協力する関係にある。

今シーズンも後半へ突入した盛夏、AUTOCARはシルバーストン・サーキットの内側へ位置する、ストウ・サーキットへ隣接した同社の技術開発センターへ招かれた。セーフティーカーとメディカルカーへ、試乗できるという。

手前からアストン マーティン・ヴァンテージ(FIAセーフティーカー仕様)と、アストン マーティンDBX707(FIAメディカルカー仕様)
手前からアストン マーティン・ヴァンテージ(FIAセーフティーカー仕様)と、アストン マーティンDBX707(FIAメディカルカー仕様)

真新しいヴァンテージのボディは、アストン マーティンを象徴するレーシング・グリーン。フロントスプリッターにサイドスカート、リアウイングはネオン・イエローで染められ、ルーフにはアンテナとパトライトが載っている。

ダッシュボードには複数のボタンが並んだパネルと、ライブ映像を確認するモニターが鎮座。シートベルトは6点式だ。コース上での存在感は、かなりのもの。殺気立った20名のF1ドライバーを、抑止するのに充分な雰囲気を放つ。

レーシングドライバーの経験は不可欠

4.0L V8ツインターボエンジンは665psを発生し、0-100km/h加速を3.4秒で処理する動力性能を秘める。2000年からFIAのセーフティーカー・ドライバーを務める、ベルント・マイレンダー氏も、相当なスキルの持ち主だ。

「速く安全に運転するうえで、レーシングドライバーとしての経験は不可欠です」。そう話す彼は、2000年のル・マンで優勝。2004年までは、ドイツのDTMを戦っていた。

アストン マーティン・ヴァンテージ・セーフティーカーのドライバー、ベルント・マイレンダー氏
アストン マーティン・ヴァンテージ・セーフティーカーのドライバー、ベルント・マイレンダー氏

ストウ・サーキットは、短い2本のストレートと8か所のコーナーで構成され、コース長は1.6kmほど。ヴァンテージのステアリングホイールを握るマイレンダーは、筆者を助手席に乗せ、息が詰まるペースで周回してくれる。加速も減速も、熾烈だ。

多くのF1マシンを従えて走る状況では、相当に積極的な姿勢が求められるという。「タイヤカスへ、ドライバーは気づかないこともあります。邪魔していると感じられてイライラさせないよう、速く走るようにしますが、安全が第一です」

ドライバーの生体認証データも確認できる

今日は筆者が隣へ座っているが、本番でパートナーとなるコドライバーは、リチャード・ダーカー氏。ピットへ戻ると、彼が待っていた。遅くてもスタート10分前から、ピットの出口でヴァンテージに乗り待機しているという。

オーストラリア・グランプリ(GP)を、ダーカーが振り返る。「緊張感は相当ですよ。激しい雨で13周走りました。あんな状況では、路面状態を把握し運営ディレクターへ伝えるため、コミュニケーション力の高いクルマが必要です。ヴァンテージのように」

アストン マーティン・ヴァンテージ(FIAセーフティーカー仕様)
アストン マーティン・ヴァンテージ(FIAセーフティーカー仕様)

レース本番のグリット後方には、メディカルカーも待機している。アストン マーティンは、2023年からDBX707を提供中。4.0L V8ツインターボが705psを発揮し、0-100km/h加速3.1秒でこなす、スーパーSUVだ。

運転席の後方には、消化器や医療バッグ、AEDなどが積まれている。レースコントロール通信へアクセスが可能で、コース上のライブ映像だけでなく、ドライバーの生体認証データも確認できるという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    役職:特派員
    フリーランスのジャーナリストで、AUTOCAR英国編集部の元スタッフ。姉妹誌『What Car?』誌の副編集長や『Practical Caravan誌』の編集長なども歴任した。元自動車ディーラーの営業マンという経験を活かし、新車・中古車市場や消費者問題について幅広く取り扱っている。近年は、これらのニュースや特集記事に加え、アイスクリーム・ワゴンのDIY方法から放置車両の探索まで、さまざまな記事を寄稿している。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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