ポルシェ914：癖を覚えれば気持ちイイ マトラM530：普段使いしやすそう？ 身近なミドシップ（2）
公開 : 2025.02.16 17:46
ミドシップの長所を体感できる機敏さ
914は、同じ高速コーナーでも明らかに安定している。バランスが良く、挙動も予想しやすい。より積極的に加速させ、ワインディングへ飛び込んでいける。グリップ力は高く、同時期のポルシェ911のような、リアアクスル寄りの癖も感取されない。
細身のステアリングホイールは、筆者には少し大きすぎるかもしれないが、手のひらへのフィードバックは鮮明。最高出力は81psにすぎないものの、充分な興奮を味わえる。ミドシップ・レイアウトであることの長所を、しっかり体感できる。
一方で、新車時代に試乗した評論家、ジョン・ボルスター氏は、M530の印象をこう残した。「これは、未来のクルマがミドシップになるという、決定的な証拠といえるでしょう」。果たして、彼の予想は正しいものではなかった。残念なことに。
しかしM530や914の運転体験は、その頃のフロントエンジン・スポーツカー、MGB GTなどより、遥かに気持ちを高ぶらせるものだったことは間違いない。実用性は低くなく、身のこなしの機敏さはゴーカートに近いと表現しても、嘘ではないだろう。
見るたびに笑顔になれる奇抜なスタイリング
試乗する前までは、未知のM530への期待が大きかった。レアなフレンチ・クラシックとして。事実、都市部や郊外の道を穏やかに流すのがお好みのドライバーなら、間違いなく運転を楽しめるはず。低い速度域なら、快適性も高い。
少し悲しそうに見える、リトラクタブル・ヘッドライトの表情も愛おしい。奇抜なスタイリングは、見るたびに笑顔になれる。
だが真面目な雰囲気の914は、郊外の道で不満なく実力を発揮できる。5速MTやペダルのレイアウトなど、多少の慣れは必要ながら、クルマとの以心伝心感は強い。優れたバランスで、81psしかないとしても、多幸感では勝るだろう。
市場の反応は、理解できるものだった。価格的に並んでいた914は、M530の10倍以上も売れた。マトラは独自モデルの提供を止めてしまったが、ポルシェは今でも小柄なミドシップ・スポーツカーを提供してくれている。
協力：COGクラシックス社
914とM530 2台のスペック
ポルシェ914 1.7（1969〜1976年／欧州仕様）
英国価格：2201ポンド（新車時）／2万5000ポンド（約488万円／現在）以下
生産数：11万8978台（914合計）
全長：3985mm
全幅：1650mm
全高：1230mm
最高速度：177km/h
0-97km/h加速：13.0秒
燃費：9.2km/L
CO2排出量：−g/km
車両重量：899kg
パワートレイン：水平対向4気筒1679cc 自然吸気OHV
使用燃料：ガソリン
最高出力：81ps/4900rpm
最大トルク：15.0kg-m/2900rpm
ギアボックス：5速マニュアル（後輪駆動）
マトラM530 LX（1968〜1973年／欧州仕様）
英国価格：2160ポンド（新車時）／3万5000ポンド（約683万円／現在）以下
生産数：9609台
全長：4197mm
全幅：1620mm
全高：1200mm
最高速度：178km/h
0-97km/h加速：11.0秒
燃費：10.6km/L
CO2排出量：−g/km
車両重量：935kg
パワートレイン：V型4気筒1699cc 自然吸気OHV
使用燃料：ガソリン
最高出力：78ps/5000rpm
最大トルク：14.3kg-m/3000rpm
ギアボックス：4速マニュアル（後輪駆動）
