290万円以下のクラシック・スポーツ メルセデス・ベンツ500 SL シボレー・コルベット C4 1980年代の2台

公開 : 2023.03.04 07:06

新しいホットハッチと同等以下の値段で、魅力的な旧車が狙えるとする英国編集部。年代毎に6回シリーズでご紹介します。

スポーツカーにとって変化の時代

1980年代はスポーツカーにとって変化の時代だった。1960年代に定評を獲得し、1970年代まで姿を変えず生き延びた英国製スポーツカーは、存在感を失っていた。

オープンカーの数は減り、グランドツアラーと呼ばれる境界線は曖昧になり、ハッチバックが若者の支持を集めた。歴史を持っていたモデルは、時代への対応に迫られた。メルセデス・ベンツ500 SLとシボレーコルベット C4の2台は、その好例だろう。

ブラックのシボレー・コルベット C4と、シルバーのメルセデス・ベンツ500 SL
ブラックのシボレー・コルベット C4と、シルバーのメルセデス・ベンツ500 SL

3代目となるR107型SLは、1971年に登場している。だが、1979年にモデルチェンジしたW126型Sクラスのコンポーネントを借用し、1980年にアップデート。エンジンのラインナップも見直されている。

その時点で追加されたのが、500 SL。ボンネットに納まった5.0L V8エンジンは、レーシングカーのホモロゲーション・モデル、450SLC 5.0由来のものだった。

フラッグシップとして、アルミホイールにパワーウインドウはもちろん、集中ドアロックやアルミ製ボンネットなどが標準装備された。メタリック塗装も追加費用なしで選べたほか、4シーター版のSLCもラインナップされている。

確かに、スタイリングは古びていなかった。サスペンションは、後のミディアムクラスとなるW114型譲りの構造で、リアに新開発だったトレーリングアーム式を採用。1980年代も乗り切れると、メルセデス・ベンツは考えた。

セパレートフレーム構造から脱却

アスファルト上では、モダンで落ち着いた印象を生んだ。サスペンションはソフトながら挙動は漸進的で、不安感なく連続するコーナーを巡ることができた。

ステアリングホイールは大きく、レシオはスロー。正確に反応したが、フィードバックも薄かった。スポーツ度が高いとはいえないだろう。

シボレー・コルベット C4(1984〜1996年/北米仕様)
シボレー・コルベット C4(1984〜1996年/北米仕様)

1983年に登場したシボレー・コルベット C4は対照的。今回ご登場願ったブラックのクーペは1989年式で、Z51と呼ばれるハンドリング・パッケージが組まれ、一層シリアスに仕立てられている。

スプリングは硬く、アンチロールバーは太く、ステアリングラックは速い。低くシャープなスタンスと相まって、ドライビング体験は間違いなくスポーティだ。軽快には感じられないとしても、重心が低く、500 SLとは比較にならないほどフラットに旋回する。

この4代目のC4では、GMがユニフレームと呼んだ、セミモノコック・ボディに鋼管フレームを組み合わせた構造を採用。セパレートフレーム構造から脱却した初めてのコルベットで、歴代最大のアップデートが図られている。

キャビンが中央部の構造体をなし、高いボディ剛性で粗野な振動を抑制。欧州製の洗練されたスポーツカーへ、接近できたコルベットといえた。それでも、英国のように雨が振りがちで、舗装が傷んだ場所が多い土地では500 SLの方が親しみやすいが。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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