ポルシェ914:癖を覚えれば気持ちイイ マトラM530:普段使いしやすそう? 身近なミドシップ(2)

公開 : 2025.02.16 17:46

世界初の市販ミドシップを生んだマトラ フォルクスワーゲンとポルシェのコラボで生まれた914 +2のリアシートを備え、エンジンはV4のM530 1960年代の個性派を、英編集部が振り返る

914には特有の癖 体で覚えれば気持ちイイ

マトラM530のV型4気筒エンジンを眺めるには、リアウインドウ両側のストッパーを解除し、持ち上げて保持しつつ、ビニールレザー張りのパーセルシェルフを開く必要がある。日常点検には困らない開口部だが、オルタネーターの交換は難しいだろう。

ポルシェ914は、遥かにシンプルな方法で水平対向4気筒エンジンへアクセスできる。しかし、+2のリアシートがないにも関わらず、整備性が大きく優れるわけではない。

ポルシェ914 1.7(1969〜1976年/欧州仕様)
ポルシェ914 1.7(1969〜1976年/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

公道へ出ると、914には特有の癖があることがわかる。当時のポルシェは、トランスミッションで高い評価を得てはいなかった。1速の位置が横に飛び出た、ドッグレッグパターンのゲートをキビキビ操作するには、ある程度の練習が求められる。

ニュートラルの場所は、4速と5速の間付近。3速を選ぼうとして、5速に入れてしまうことは珍しくない。1時間ほど運転したが、筆者は最後まで慣れなかった。フロアヒンジでオフセットしたペダルの配置も、体で覚えなければならない。

この2つを習得すれば、914は気持ちいい。今回の車両は1972年式で、燃料インジェクションの1.7L空冷エンジンは、想像以上に強力。レッドラインまでスルスルと回転し、サウンドも小さなポルシェらしい。

0-97km/h加速は13.0秒にすぎないが、低い着座位置もあって、スピード感は高い。特に1速と2速での反応は鋭い。後期の2.0Lエンジンならより充足度は高いと想像するが、身近な価格のスポーツカーにありがちな、パワー不足はほぼ感じないといっていい。

普段使いしやすそうなM530 剛性不足のボディ

他方、M530は1970年式のLX。この年にアップデートを受けており、リアウインドウはアクリル製からガラス製へ変更されている。ツインチョークのソレックス・キャブレターが載り、最高出力は5ps上昇している。

1.7LのV型4気筒エンジンは、1960年代のフォード的。バルブギアのノイズが大きく、回転数を引っ張っても心地良い響きにはならない。そのかわり、低域からパワフル。78psでも、914より発進加速は活発といえる。4速マニュアルも操作しやすい。

マトラM530 LX(1968〜1973年/欧州仕様
マトラM530 LX(1968〜1973年/欧州仕様    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ペダルレイアウトは、これも少しオフセットしていて、それぞれの間隔が狭い。ステアリングコラムの付け根もペダルへ近く、足先に当たることがしばしば。

運転席からの視界は広く、ステアリングレシオは914よりクイック。低域でのトルクの太さもあって、M530の方がキビキビと操れるように感じられる。運転姿勢はサルーンのように起き気味で、乗降性も悪くない。当初の設計の狙い通り、普段使いしやすそうだ。

ところが高速道路へ出てみると、オープン状態では明らかに剛性が足りていない。路面の不整に合わせて、ボディが不自然にしなるのがわかる。

大きめの凹凸を越えると、フロントフェンダーがキャビンとは別に揺れるのが見える。それでいて、サスペンションは硬くない。カーブでのボディロールが小さくない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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