【なぜまたF1?】2040年EV/FCEV100%を掲げるホンダが、2026年からF1ワークス活動を再開する理由

公開 : 2025.03.07 12:25

第5期と言われないようにするために

ホンダによれば、2026年の新レギュレーションでは、パワーユニット全体出力700kWのうち、カーボンニュートラル燃料を使うエンジンとモーターそれぞれの出力はともに350kWとなる。これは、モーター出力が2009年時点での60kW、2014年からの120kW、そして2022年からのエタノール10%混合燃料E10によるエンジンとモーター120kWという規定に比べて、技術的に遥かにハードルが高い。

さらに、F1運営側からはパワーユニット開発コストや、パワーユニット単体での試験時間などが厳しく制限されている。

電動化の重要性が段階的に高まってきた、F1規定を示すホンダの資料。
電動化の重要性が段階的に高まってきた、F1規定を示すホンダの資料。    桃田健史

一方で、ホンダの量産化開発では、ゼロシリーズによる次世代EV開発を進めると同時に、小型(1.5L)と中型(2.0L)のe:HEVを各種モデルでの部品共通性を高めていくことが、当面の技術開発の流れとなる。つまり、ホンダにとってF1で必要とされる技術と、高い技術ハードルを乗り越えようとする技術者の育成という観点で、量産車開発との整合性はあると思う。

今後、F1というカテゴリーが存続する限り、パワーユニット規定はカーボンニュートラルとの整合性を念頭に置いて、自動車メーカーが参加する動機づけになる方向に向かうことだろう。むろん、社会情勢の変化、またはホンダを含めた自動車メーカー個社の経営戦略によってF1との距離を置くこともあるだろう。

その上で、筆者はホンダ・レーシングの渡辺社長に「第5期の達成目標は何か? 何をもっていつまでF1活動を続けるイメージなのか?」と聞いた。

これに対して渡辺社長は「続けられる体制を整え始めている。(親会社の)ホンダの業績が多少動いても、HRC(ホンダ・レーシング)として、F1のノウハウを蓄積する。(F1事業を続けるには)根性論ではなく、自分たちでレース資金を稼ぐマネタイズ(の体制)も進める」と独立したレース会社としての姿勢を示した。その上で「(世間から)第5期とは言われないようにしたい」と、事業の持続性を強調した。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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