【やっと死の谷超え?】トヨタ、ホンダ次世代型燃料電池システム初公開の場で見聞きしたこと

公開 : 2025.02.26 06:05

燃料電池や水素に関する国内最大級見本市『H2&FC EXPO(春)~第23回国際水土・燃料電池展』が、2025年2月19〜22日に東京ビッグサイトで開催されました。現場を取材した桃田健史が、トヨタ、ホンダの取り組みを中心にレポートします。

トヨタホンダが次世代型燃料電池システムを世界初公開

やはり、まだまだ先を見通すのは難しい。

燃料電池や水素に関する国内最大級見本市『H2&FC EXPO(春)~第23回国際水土・燃料電池展』(2025年2月19〜22日、於:東京ビッグサイト)を現場取材して、そう感じた。

『H2&FC EXPO(春)~第23回国際水土・燃料電池展』が2月19〜22日に東京ビッグサイトで開催。
『H2&FC EXPO(春)~第23回国際水土・燃料電池展』が2月19〜22日に東京ビッグサイトで開催。    トヨタ自動車

開催初日の午前中、トヨタ自動車(以下、トヨタ)と本田技研工業(以下、ホンダ)のブースには人だかりができていた。それぞれが次世代型の燃料電池システムを世界初公開したからだ。

まず、トヨタの第三世代FC(フューエルセル:燃料電池)だが、展示は大きく3タイプ。乗用車向け、大型商用車向け、そして汎用向けだ。それぞれでパッケージングの大きさが違う。乗用車向けはコンパクトにまとめてクルマへの搭載性をあげたことが分かる。

一方で大型商用車向けは、かなり横長だ。さらに、建設機械・鉄道・定置型などに対応する汎用向けでは、様々な用途への接続性を上げるために、補機類の配置が乗用車向けとの違いが分かる。いずれも特徴は、従来品と比べて耐久性能が2倍で、ディーゼルエンジンと同等のメンテナンスをあまり気にしなくても良い仕上がりとした。燃費性能は従来比1.2倍で航続距離は約20%向上した。

トヨタは2023年6月、静岡県の東富士研究所で開催した『テクニカルワークショップ』で燃料電池や水素に関する事業のロードマップを示している。今回の取材でトヨタ関係者は「今回の出展は従来のロードマップに沿った形だ」と説明した。

ホンダ次世代モデルはホンダ自主性を強化して開発

次に、ホンダは、2027年度に量産開始予定の次世代燃料電池モジュールと、2026年度に生産開始予定の燃料電池定置電源を世界初公開した。

次世代燃料電池モジュールで、すぐ隣に展示された現行モデルと比べると全体的に少し小さくなりレイアウトがスッキリした印象だ。容積出力密度が3倍以上になったことで小型化した。これにより、汎用品として多様な用途に対応できる。

ホンダは、2027年度に量産開始予定の次世代燃料電池モジュールと、2026年度に生産開始予定の燃料電池定置電源を世界初公開。
ホンダは、2027年度に量産開始予定の次世代燃料電池モジュールと、2026年度に生産開始予定の燃料電池定置電源を世界初公開。    桃田健史

定格出力は150kWで、現行モデルと比べて、製造コストを半減するという大きく躍進した。耐久性能は2倍以上。生産拠点は、栃木県真岡市の新工場となる。昨年10月まで四輪車のエンジン部品などを生産していた工場で、パワートレイン製造部の敷地と建屋を活用する。

生産能力は年3万基を目指す。ホンダ関係者は「現行モデルはGM(ゼネラルモーターズ)との共同開発だが、次世代型はGMとの協業で得た知見を使ったホンダ独自の設計」という。

もうひとつ、今回の展示の目玉である、燃料電池定置電源は、現行モデルの燃料電池を使ったもの。冷却システムや内部レイアウトの設計を考慮したことで、定置型電源としてはコンパクトにまとめた。

このように、トヨタもホンダも燃料電池ビジネスをB2C(個人消費者向け)の乗用車向けから、建設機械、鉄道、定置型電源など、燃料電池システムをハッケージとしたB2B(事業者間)に大きくシフトしようとしているところだ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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