実際に発売も デザイナー志望の学生が「スーパーカー」に挑戦 プロの目に留まった4作品とは?

公開 : 2025.03.11 18:25

スケッチから立体模型まで

スタイリングに求める要件は厳格なものだ。スポワーズ氏は、現代のハイパーカーに見られる攻撃的で「モンスター的」な外観は避け、モダンでタイムレスな美しさを備えたクルマにしたいと考えている。

数十万ポンドになるであろう高額な価格設定に見合った、洗練されたものでなければならない。フルボディのGT(グランドツアラー)というよりも、低重心のスーパーカーでなければならない。そして、効率性の高さと軽さを外観でアピールしたい。

審査員には現役の自動車デザイナーたちも加わり、プロの目による厳しい評価が行われた。
審査員には現役の自動車デザイナーたちも加わり、プロの目による厳しい評価が行われた。

昨年10月、スポワーズ氏がデザインの「ハードポイント」をいくつか提示し、マフムード氏が学生たちに作業を割り当てた。学生たちはこうした「顧客の要求」を念頭に置きながら、まずフリーハンドでスケッチを描き、それをCAD図面に起こし、さらにその情報を1/4スケールのクレイモデル(粘土の立体模型)に転換するという作業に取り掛かった。クレイモデルを作るのはプロのデザイナーでも難しい作業であり、自動車メーカーのデザイン部門には専門のクレイモデラーがいるほどだ。

学生たちは、他の授業や課題と並行しながら、8週間でアイデア出しからプレゼンテーションまでの一通りの準備を終えた。そしてクリスマスの直前、スポワーズ氏、マフムード氏、そしてベントレーのインテリアデザイン部門責任者であるダレン・デイ氏(コベントリー大学の卒業生)、ジャガーの元デザイン責任者イアン・カラム氏、そしてリバーシンプルのコンサルタントエンジニアであるジム・ルーター氏で構成される審査員団にモデルを発表した。

学生たちは、コベントリーの大型展示スタジオで作品を披露した。各モデルの後ろのスクリーンには、初期スケッチやCADによる開発過程が貼り出された。

デイ氏やカラム氏にとっては普段の業務と同じ流れのようだったが、他の参加者にとっては、デザイナーが実際に直面する冷酷な評価プロセスを目の当たりにした形だ。学生にはそれぞれ、自分のデザインを説明する時間が1分間だけ与えられ、その後、審査員がデザインを吟味し、さまざまな質問を投げかけた。14のエントリー作品から数名の最終候補に絞られ、その中から優勝者が選ばれた。

現役デザイナーによる厳しい審査

審査は迅速に行われ、容赦なく厳しいものだった。プロのデザイン業界では、このようなものらしい。印象に残ったものには時間をかけ、明らかに受賞に値しないものは見過ごされた。

あまり時間をかけてもらえなかったデザイナー志望の学生たちにとっては、興味深い教訓となったことだろう。次回はもっと頑張ろうという意欲につながる。14作品すべてが審査された後、学生たちは部屋を出ていき、審査員によって最終候補者と受賞者が選ばれた。

学生たちは短い時間の中でデザインとクレイモデルの制作、プレゼンテーションの準備をしなければならなかった。
学生たちは短い時間の中でデザインとクレイモデルの制作、プレゼンテーションの準備をしなければならなかった。

学生の通常のカリキュラムと並行するプロジェクトということもあって、作品の水準は総じて高く評価された。カラム氏とデイ氏は、プロであっても、見栄えの良いスケッチを1mほどの粘土彫刻に変換するのは難しい作業だと認めている。

コベントリーでは、近隣のJLR(ジャガー・ランドローバー)からプロのクレイモデラーを定期的に招き、学生の指導に当たらせている。それでもプロのデザイナーからは、デザインに「もっとストーリー性を持たせるべき」という意見がしばしば寄せられた。

革新的なパワートレインを搭載した軽量かつ高効率なクルマは、その機能を形状で表現すべきであり、フロント部分の美しいラインは、側面や背面にも反映され、解決されるべきである。

スポワーズ氏にとっては、学生たちが提案する形状は、求めていたものよりもふくよかで「GTらしい」傾向があることが共通の欠点であった。また、最初のスケッチの優れた部分が立体模型に反映されていないケースも多々あった。

カラム氏とデイ氏によると、これはプロでも悩まされるポイントだそうだ。このため、自動車デザインには手間と時間がかかり、すべての自動車デザイナーは、上司や同僚の意見に耳を傾ける習慣を身に付けなければならない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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