英国、EV規制を緩和 ハイブリッド車は2035年まで販売可能に 「トランプ関税」の影響も

公開 : 2025.04.08 06:45

ドナルド・トランプ米大統領が輸入車に関税を課したこと、世界のEV需要が予想を下回っていることを受け、英国政府は自動車メーカーへの支援策として「ZEV規制」の枠組みを見直しました。

業界の「声」に耳を傾けた

米国が輸入車に25%の関税を課したことを受け、英国政府は自動車業界への支援策として、ゼロ・エミッション車(ZEV)規制の枠組みを大幅に緩和した。

この一環として、日産キャシュカイeパワーのような「フルハイブリッド車(ストロングハイブリッド車)」の販売は2035年まで継続できること、少量生産の自動車メーカーは2030年までにEVの新車販売比率を80%に引き上げる規制が免除されること、また、すべてのメーカーは年間EV販売目標の達成をより柔軟に目指せることが明らかになった。

メーカーに一定割合以上のEV販売を義務付ける英国のZEV規制が緩和された。
メーカーに一定割合以上のEV販売を義務付ける英国のZEV規制が緩和された。

昨年末、EVの需要が政府目標値を大幅に下回り、自動車メーカーの利益を脅かしていることを受け、英国政府は業界各社と協議の上で規制を見直すことを約束した。

現在の規制では、自動車メーカーは2025年内にEV販売比率を28%(新車の4分の1以上)に引き上げることを義務付けられているが、最近の市場データによると、需要はそれを8ポイント以上下回ることがわかっている。

EVの割引販売など、メーカー各社が数十億ポンドを投じて需要喚起に注力した結果、昨年のEV販売比率目標である22%は達成された。その後、英国政府は緊急課題として規制の見直しに動いていたが、ドナルド・トランプ米大統領が外国製自動車すべてに25%の輸入関税を課すことを発表した先週、対応の必要性はさらに高まった。関税は、昨年生産量の27%を米国に輸出している英国の自動車産業にとって大きな打撃となる。

その結果、英国のキア・スターマー首相は「世界が不安定な時代においては、政府は『変化に向けた計画(Plan for Change)』を通じて、より迅速に経済の再構築を進める必要があります」と述べ、変革を加速させている。

政府は、この変革により「業界がEVへのアップグレードを容易に行えるようになると同時に、2030年までにガソリンおよびディーゼル車の新車販売を停止するというマニフェストの公約が果たされ、より多くの英国の消費者が低価格のEVというメリットを享受できるようになります」と述べている。

また、夏には「現代の産業戦略」を発表し、改訂されたZEV規制をフォローアップする予定である。

英国政府は、関税の影響を相殺するためにトランプ大統領と新たな貿易協定の交渉を試みているが、交渉が不調に終わった場合に備え、報復措置のリストを作成している。

政府は、「新たな関税の影響が明らかになるにつれ、自動車産業への支援は継続されるだろう」と述べた。

業界団体である英国自動車製造販売者協会(SMMT)のマイク・ホーズ会長は、この緩和策を正しい方向への一歩であると歓迎し、次のようにコメントした。

「政府は業界の声を聞き、メーカーが強い圧力にさらされていることを認識しました。業界は引き続き道路輸送の脱炭素化に取り組みますが、特に消費者需要の低迷や地政学的な混乱を考慮すると、ZEV規制の目標は非常に厳しい。しかし、EVの需要を必要なレベルまで引き上げるには、自動車ユーザーが安心して乗り換えられるよう、同様に大胆な財政的インセンティブが必要です」

「規制改正の詳細が待たれますが、米国の関税導入によりメーカーが直面する可能性のある厳しい逆風を考慮すると、業界の競争力を守るためには、より積極的な行動がほぼ確実に必要となるでしょう。英国と米国の交渉は速やかに進めなければなりません。また、待望の産業戦略および貿易戦略は自動車を優先し、迅速に実施されるべきです」

「この大きく変化した世界において、特にサプライチェーンを支える一連の対策が必要です。そうすることで、わが国に必要な経済成長、雇用、投資を実現することができます」

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    役職:副編集長
    AUTOCARの若手の副編集長で、大学卒業後、2018年にAUTOCARの一員となる。ウェブサイトの見出し作成や自動車メーカー経営陣へのインタビュー、新型車の試乗などと同様に、印刷所への入稿に頭を悩ませている。これまで運転した中で最高のクルマは、良心的な価格設定のダチア・ジョガー。ただ、今後の人生で1台しか乗れないとしたら、BMW M3ツーリングを選ぶ。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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