ボルボ、CEOが退任 最後のインタビューで語った「業界の大変化」 自動車からITへ?

公開 : 2025.04.01 07:45

他社は「本質を見失っている」

ローワン氏は、スコットランドのテート・アンド・ライル社で機械工学の見習いとしてキャリアをスタートさせたが、すぐにIT業界に転向し、ブラックベリー社とダイソン社で最高執行責任者を務め、2017年から2020年まではダイソン社のCEOを務めた。

その後、10年間にわたってボルボを率い、同社の高級化を進め、アウディメルセデス・ベンツなどと肩を並べるまでに成長させたホーカン・サミュエルソン氏の後任となった。ローワン氏は、ボルボが築いてきた高い信頼性を磨き続ける一方で、技術力を前面に押し出すことが自身の仕事だと語る。

ボルボの車載コンピューター
ボルボの車載コンピューター

「それが業界の方向性です。率直に言って、それを理解せず、今その技術に投資しなければ、取り残されることになるでしょう。中国はこのことをよく理解しています」

「だからこそ、今でも内燃機関を推し進めようとしている多くの競合他社には、時々驚かされます。彼らはそれで大金を稼いでいますが、本質を見失っています」

「わたしはスマートフォン業界出身です。ブラックベリーの人間です。ノキアやエリクソンもありました。シーメンスもありました。フィリップスはかつて携帯電話を製造していましたし、アルカテルも。しかし、これらの企業はすべて、もはや存在しません。なぜなら、わたし達は皆、RF回路、つまり接続の質のことばかり考えていたからです」

「実際には、ソフトウェアが重要でした。携帯電話を単なる電話以上のものにするエコシステムの構築が重要だったのに、彼らはそれを見逃しました。そのことに気づいた2社、アップルとグーグルは1兆ドル規模の企業となり、他の企業は存在していません」

ソフトウェアへの投資は、ハードウェアを犠牲にするものではないと、ローワン氏は主張する。

「ソフトウェアで多くのことを可能にし、強化できれば、より良い体験を提供できます。アップルを見てください。わたしはアップル製品のハードウェアが大好きです。スクリーンの明るさも大好きです」

「iPhoneの動作や感触、作り込みも大好きです。ソフトウェアも好きですが、それ以上に、全体の仕上がりが大好きです。もし、自動車の中でそれを再現できれば、最高の組み合わせになるでしょう」

ボルボの強みはどこにあるか

ローワン氏によると、価格がほぼ唯一の判断基準となる大衆車とは異なり、高級車ではブランドの強みがまったく異なる意味を持つという。しかし、「EV時代のクルマのプレミアム性は、まだ定義されていない」ため、高級車メーカーの従来のブランド価値は、内燃機関の時代から必ずしも引き継がれるものではない。

「内燃機関では、乗り心地の良さなどによって『高級感』が生まれます。それがブランドの特性であれば、クルマの前部に大きな重いエンジンを搭載するため、膨大な費用がかかることになります。時速120kmでコーナーを走り抜けるため、スムーズなエンジン、素晴らしいシャシー、サスペンションを作るのに、膨大な費用をかけることになります」

ボルボEX90
ボルボEX90

「そこに突然、新しいテクノロジーが現れます。スケートボードのような平らなデザインを採用して低重心を実現する。これでクルマの前部にある大きな重いエンジンを相殺する必要がなくなるため、サスペンションや、ある程度はシャシーの設計もそれほど重要ではなくなる。バッテリー技術ではトルクが自由に手に入るため、エンジンの爆発力やスムーズさは重要ではなくなる。では、ブランドの特性とは何でしょうか?」

「中国では、人々はこう言っています。『同じ加速性能、同じ乗り心地、同じハンドリングが半額で手に入るのに、なぜこのクルマを買わなければならないのか?』」

ローワン氏は、ボルボのブランド特性である安全性とスカンジナビアンデザインはEV時代になっても変わらないが、テクノロジーのリーダーになることで「さまざまな理由で」顧客を引き寄せることができると語る。

「これは業界で起こっている大きな、そして深い変化の1つです。もし、従来のポジショニングを優れたソフトウェアで強化できれば、若い世代がブランドに興味を持ち、クールなクルマを見てくれるでしょう」

「当社は以前、会計士、医師、歯科医、弁護士にクルマを販売していました。しかし今では、若いソフトウェアエンジニアやマーケティング担当者にも多く販売しています。なぜなら、ブランド特性が適度に控えめで、謙虚であり、特に子供がいる場合は何よりも安全性を重視するからです」

記事に関わった人々

  • マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    役職:編集者
    自動車業界で10年以上の経験を持つ。欧州COTYの審査員でもある。AUTOCARでは2009年以来、さまざまな役職を歴任。2017年より現職の編集者を務め、印刷版、オンライン版、SNS、動画、ポッドキャストなど、全コンテンツを統括している。業界の経営幹部たちには定期的にインタビューを行い、彼らのストーリーを伝えるとともに、その責任を問うている。これまで運転した中で最高のクルマは、フェラーリ488ピスタ。また、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIにも愛着がある。
  • 林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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