1980年代の名作クーペ『いすゞピアッツァ』とベースのコンセプト『アッソ・ディ・フィオーリ』 ジウジアーロ・デザインが市販に至るまで
公開 : 2026.07.25 11:45
スポーティさは抑えられた一方、居住性が高い
まずフロントでは、アッソ・デ・フィオーリはピアッツァと比べ車高だけでなくバンパーの位置が低く、ヘッドライトの厚みも薄めだ。
サイドウインドウはアッソ・デ・フィオーリの方が倒れ込んでおり、比べてみるとよりシャープで精悍な印象。Aピラーの角度もアッソ・デ・フィオーリの方が寝ており、それに伴いボンネットのラインも直線的に見える。

ここでわかるのは、アッソ・デ・フィオーリが当時のスポーツカーらしい鋭くウェッジシェイプのスタイリングであるのに対し、ピアッツァはAピラーの角度が少し立ち気味で、ボンネットをはじめ各サーフェスライン(面構成)に大きめのRが与えられていることだ。
この結果、アッソ・デ・フィオーリと比較するとスポーティさは抑えられた一方、居住性が高い印象に繋がり、バランスが取れたデザインになった。これはコンセプトのひとつである、家族4人で週末旅行が可能な実用性、居住性を有することが反映されている。
細部に目を移すと、アッソ・ディ・フィオーリがドアミラーであるのに対し、ピアッツァがフェンダーミラーであることに気がつく。一部ではこのフェンダーミラーを見てジウジアーロが不満を呈したという話が流れているが、中尾氏は否定する。
「このフェンダーミラーも彼がデザインしています。ジウジアーロは『それは法規なのだから仕方がない。デザイナーは、何かあったらそれに合わせて作るもの』だと認識していました」
また、インテリアでも「メーターのキーデザインはジウジアーロのものですが、最終的に要件を入れたデザインはいすゞです」と話す。
今に生きるいすゞのデザイン
最後に中尾氏はアッソ・デ・フィオーリとピアッツァについて、「1980年代にデザインされたことを考えて欲しい」と強調する。
同じ時代に作られたクルマのデザインは今見ると古く感じるものが多いが、アッソ・デ・フィオーリとピアッツァは普遍的で美しいデザインであり、「このデザインフィロソフィーは、今のいすゞにも生きている」と述べる。

「トラックの生産期間(モデルライフサイクル)は長く、例えば30年前にデザインしたトラックが今でもそのデザインのままで走っています。つまりデザインは普遍的です。いすゞは過去、乗用車でそういったデザインをやっていたからこそ、今のいすゞのクルマにもそのフィロソフィーが引き継がれています。街の中にも違和感なく溶け込み、親しみのある普遍的なデザインを作っているのがいすゞなのです」
アッソ・デ・フィオーリとピアッツァの2台を一度に比較すると、ここが違うんだという気づきに繋がるものの、そのまま生産化されたと言われても納得しそうになる。それほどまでに、ジウジアーロのデザインを忠実に再現しているいすゞの技術力は見事だ。
そしてやはり、今見ても40年以上前に描かれたとは思えないデザインに驚かされる。中尾氏が言う普遍的なデザインとはまさにこのことを指し、トラックが纏うロングライフのデザインこそ、いすゞが過去から培って来た強みのひとつと言えるだろう。


























































