【マツダS8Pヒストリー:後編】ジウジアーロがデザインした幻のコンセプトカー!FFのロータリーモデル誕生のきっかけに

公開 : 2025.06.27 11:45

マツダは『オートモビルカウンシル2025』に、カロッツェリア・ベルトーネ時代にジョルジェット・ジウジアーロがデザインしたコンセプトモデル、『S8P』を展示しました。クルマの成り立ちについて、内田俊一が前編、後編に分けてレポートします。

S8Pとルーチェロータリークーペ

オートモビルカウンシル2025』でマツダが展示した『S8P』。前編ではなぜカロッツェリア・ベルトーネ(以下ベルトーネ)に依頼したのか、その経緯を書かせて頂いた。後編ではS8Pに至る流れとともに、現車の特徴などについてお伝えしよう。

1963年の全日本自動車ショーに出品されたルーチェは、生産には至らなかった。その理由はサイズがコンパクトであったことや、初代ファミリアの投入を優先したためである。

マツダがオートモビルカウンシル2025で展示した『S8P』。
マツダがオートモビルカウンシル2025で展示した『S8P』。    中島仁菜

ちなみにエンジンは993ccと1484ccの水冷直列4気筒とされ、全長3960mm、全幅1480mm、全高1385mm、ホイールベース2305mmというサイズだった。初代ファミリアより約200mm全長が違う程度だったことから、より大きなクルマとして改めてベルトーネにスタディをしてもらったのがこのS8Pだといわれている。この案をもとに社内デザイナーの手で量産化されたのが、1966年8月に発売された『ルーチェ1500セダン』である。

ロータリーエンジン縦置き、前輪駆動を想定

さて、S8Pのパワートレインはロータリーエンジンを縦置きし、前輪を駆動することが想定されていたため、ボンネットは低くデザインされた。実際にエンジンは木で作られたダミーが搭載されていたが、エンブレムなどはマツダのロータリーの証である三角形にMの文字が記されたものを採用。

このエンブレムは当時のマツダのものとは若干違っており、ジウジアーロ氏がデザインしたものかもしれない。今回来日した折にマツダの関係者が質問をしたが、覚えていなかったそうだ。

1969年に登場したマツダ・ルーチェロータリークーペ。
1969年に登場したマツダ・ルーチェロータリークーペ。    マツダ

マツダは当時FFの経験がなく冒険だということで、普通のFR+4気筒を選択。しかし、FF+ロータリーは諦められなかったようだ。

1967年にマツダとして初めてロータリーエンジンを搭載した『コスモスポーツ』がデビューして以降、1968年には『ファミリアロータリークーペ』と続き、1969年にはついにFFの『ルーチェロータリークーペ』が登場。1970年には『カペラロータリークーペ』が導入され、一連のロータリークーペシリーズを完成させた。

その『ルーチェロータリークーペ』こそがS8Pの印象に近いことを踏まえると、S8PがあったからこそFFのルーチェロータリークーペが誕生したといっても過言ではないだろう。

ロータリーセダンがあった?

実は、会場で非常に貴重な写真を発見した。それは初代ルーチェと思しき2台と、その先頭に少し表情の違うセダンが並んでいるものだ。それをよくよく見ると、先頭のクルマは後続のルーチェセダンとはフロントフェイスが違い、さらにはロータリーのエンブレムが小さく見て取れる。

あとから入手した情報によると、このモデルは『S10P』と呼ばれるものだった。S8Pは、コスモスポーツの試作車『L402A』に搭載されていた399cc×2ローターである、L8A型ロータリーエンジンで企画しベルトーネへデザインを依頼。そこから市販化を見据え、コスモスポーツの市販車に搭載された491cc×2ローターである10A型を使うべく、仕様変更されたのがS10Pなのである。つまりS8Pの『8』とS10Pの『10』は排気量を示していたのだ。

初代ルーチェと思しき2台と、先頭に少し表情の違うセダン『S10P』が並んでいる当時の写真。
初代ルーチェと思しき2台と、先頭に少し表情の違うセダン『S10P』が並んでいる当時の写真。    マツダ

恐らくこのS10Pは現存していないので駆動方式がFFとFRのどちらだったかはわからないが、ロータリーエンジンを搭載しテストを行っていたことはこの写真からも明らかだ。また、ルーチェロータリークーペとの関係は現時点では不明ながら、少なからず影響はあったと想像するのも楽しいではないか。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    内田俊一

    日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も得意であらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。現在、車検切れのルノー25バカラとルノー10を所有。
  • 撮影

    中島仁菜

    Nina Nakajima

    幅広いジャンルを手がける広告制作会社のカメラマンとして広告やメディアの世界で経験を積み、その後フリーランスとして独立。被写体やジャンルを限定することなく活動し、特にアパレルや自動車関係に対しては、常に自分らしい目線、テイストを心がけて撮影に臨む。近年は企業ウェブサイトの撮影ディレクションにも携わるなど、新しい世界へも挑戦中。そんな、クリエイティブな活動に奔走しながらにして、毎晩の晩酌と、YouTubeでのラッコ鑑賞は活力を維持するために欠かせない。
  • 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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