グリップを作り出す2大要素 『粘着摩擦』と『ヒステリシス摩擦』の違いを理解する【サイトウサトシのタイヤノハナシ 第24回】

公開 : 2026.09.16 12:05

欧州ではシリカ入りのタイヤじゃないと売れない

最近では、シリカ(SiO2)を配合したタイヤが増えています。

シリカは2000年代に入ってから……と記憶しているのですが、欧州でシリカ入りのタイヤじゃないと売れないというくらい、シリカ配合タイヤが求められるようになりました。

先日の勉強会では、使い捨てカイロでゴムを温めて実験しました。こういった取材も知識に繋がります。
先日の勉強会では、使い捨てカイロでゴムを温めて実験しました。こういった取材も知識に繋がります。    ブリヂストン

これは、シリカ配合タイヤがウエットグリップで圧倒的な性能を示したからでした。

シリカは、カーボンに代わる補強材であり、しかも0℃近い低温でもコンパウンドの柔軟性を保つ働きを持っているため、特にヒステリシス摩擦を引き出すのに有効で、ウエットグリップ性能高める効果を持っているのです。

その結果、当時の欧州では、シリカ入りタイヤじゃないと売れないといわれるほどでした。  

シリカの『神』性能とは

もうひとつ、シリカの大きな特長があります。

それは、転がり抵抗が小さいということ。ウエットグリップの良さ(=ヒステリシス摩擦の大きさ)と矛盾していないか? と思われるかもしれませんが、ここがシリカの『神』な性能。

じつはシリカ配合コンパウンドは、10~100Hz(巡航時にタイヤが比較的大きく変形⇔復元を繰り返す領域)では、転がり抵抗が少なく、省燃費効果が期待できるのです。

そして、10kHz~1MHz(ブレーキ時やコーナリング時)では、ヒステリシス摩擦を急激に大きくしてグリップ性能を高める働きをします。

こんな具合に、ヒステリシス摩擦はタイヤのグリップ性能として案外身近なところで仕事をしているのです。

基本的な(?)グリップの仕組みがぼんやりとでも見えてくると、添加剤や分子結合技術を使って粘着摩擦とヒステリシス摩擦をどう引き出そうとしているのかがわかってくる、のではないかと思っています。もしかしたら、さらに混乱させてしまったかもしれませんが……。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    斎藤聡

    1961年生まれ。学生時代に自動車雑誌アルバイト漬けの毎日を過ごしたのち、自動車雑誌編集部を経てモータージャーナリストとして独立。クルマを操ることの面白さを知り、以来研鑽の日々。守備範囲はEVから1000馬力オーバーのチューニングカーまで。クルマを走らせるうちにタイヤの重要性を痛感。積極的にタイヤの試乗を行っている。その一方、某メーカー系ドライビングスクールインストラクターとしての経験は都合30年ほど。

サイトウサトシのタイヤノハナシの連載

連載をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

Google検索で『AUTOCAR JAPAN』の記事を見つけやすくする方法

人気記事