尊敬するエンジニアたちが教えてくれたこと ブリヂストンのパブリックイメージ(前編)【サイトウサトシのタイヤノハナシ 第22回】
公開 : 2026.07.15 12:05
タイヤの達人・サイトウサトシが、30年以上蓄積した知識やエピソードを惜しみなく披露するこのブログでは、各タイヤメーカーのパブリックイメージをおさらい中。第22回はブリヂストンの前編です。
尊敬するふたりのエンジニア
ブリヂストンのイメージは、『ひたすらでかい会社』です。
あくまでもイメージですが、人の話に耳を貸さず、ある意味、唯我独尊的なタイヤ作りをしているイメージがあります。実際のところは全然違うのでしょうが、なにしろ会社が大きすぎて、中の葛藤が外に漏れないというところはあるかもしれません。

もうひとつ、ボクにこのイメージを植え付けたのは、ボクが尊敬するふたりのエンジニアの存在です。
この話を深く突っ込んでいくと、後半のプロダクトの話にもなってしまうのですが。まあ、とりあえず書きます。
ちょうどボクが、タイヤの仕事をもらうようになって、試乗会に参加させてもらって、いろんな知識を学ばせてもらう、まさにそんなころ。ボクが駆け出しのころにいらしたおふたりなんです。
KさんとYさん。書き進めると、ご本人も関係者もみなさん判ってしまうのですが、あえて、イニシャルにさせていただきます。
ポテンザRE71を作ったKさん
Kさんは、『ポテンザRE71』を作ったエンジニアです。ポルシェ959の開発に合わせて、世界で初めてNコード(N0)を取得したのがポテンザRE71です。その開発を手掛けていたのがKさんだったのです。
それから、様々なクルマにOE採用されたポテンザRE86も、Kさんの仕事でした。

RE86は、確かAE86のトヨタ・カローラレビン/スプリンタートレノにも装着されましたし、Z32の日産フェアレディZにも採用されていました。当時、たぶん11車種くらいに純正採用されていたと記憶しています。
RE71の後、RE71G、RE710、RE710kaiと次々に名作を手掛けていきます。
タイヤを正しく評価するために必要なこと
いつだったか、雑誌独自の『タイヤの定地テスト』という企画が持ち上がって、Kさんに相談したことがあります。Kさんの答えは思いのほか厳しいものでした。路面温度管理はどうするのか、水深は一定を確保できるのか、水深何mmなのか、といったほぼ頭ごなしのダメ出しでした。
ただ、この時、不思議と少しも嫌な気分にはなりませんでした。Kさんの「自分の作ったタイヤを正しく評価してほしい」という本気の思いが伝わってきたからだと思います。

そんな厳しいことを言われても……という反発心はありましたが、1年を通して定期的に実施することを前提にした定地テストを行うためには、環境の整備というか、均一化が重要です。
ドライ路面もウエット路面も、気温が違えば制動距離は違ってくるし、水深の管理はさらに難しい。確かに路面温度によって制御距離は変わりますし、ウエットブレーキでは水深がシビアに制動距離に影響します。
タイヤを作る側からしたら、正確度の低いテストでタイヤを評価されたらたまらん、ということです。結局その企画は、没になってしまいました。
それから20数年経って、タイヤグレーディング制度というものができ、タイヤの転がり抵抗とウエットブレーキの横比較ができるようになったのでした。

