「路上移動の究極形へ最も近い」 ロールス・ロイス・ファントムIII(1) V12に活きるシュナイダー・トロフィーの知見

公開 : 2026.10.25 17:45

「路上移動における究極形へ最も近い」

ファントムIIIに、2台として同じ仕様は存在しない。それはコーチビルダーによって、要望に応じたボディが架装されたため。1937年のAUTOCARでは、2台のファントムIIIへ試乗しているが、これもボディは大きく異なった。

一方は、オーナー・ドライバーを想定した7シーターのサルーンボディで、パーカー社製。他方は、パークウォード社によるプルマン・リムジンだった。AUTOCARの計測によると、後者の0-97km/h加速は16.8秒で、154.5km/hの最高速度を残している。

ロールス・ロイス・ファントムIII(1937年式/ウィンドオーバーズ・ボディ)
ロールス・ロイス・ファントムIII(1937年式/ウィンドオーバーズ・ボディ)    ルイス・ドゥアルテ(Luis Duarte)

そして、次のように報じられた。「V12エンジンは先代より一層静寂性に優れ、トップギアでの柔軟性は明らかに向上しています。動力性能の幅は確実に広がりました」

「定番の公道ルートでのテストでは、濡れた条件でありながら、過去の記録を上回る1時間で走破しています。同乗者へ、不安を与えることなく。後席の乗り心地も素晴らしい。快適性でも動的能力でも、路上移動における究極形へ最も近づいたといえます」

売れるほど赤字を生んだファントムIII

ただし、この究極形へ迫ったロールス・ロイスは、売れるほど赤字を生んだ。ファントムIIIの製造コストは、当初の見積もりを大幅に上回っていたのだ。ボルトやナットまで、自社のダービー工場で製造していたことが増大を招いていた。

ボディが架装されない、エンジンの付いたローリングシャシーのお値段は1850ポンド。現在の価値で11万5000ポンド(約2392万円)に達し、購入できるのは極めて裕福な人に限定された。納車が遅れた1939年以降も含めて、生産は727台に留まった。

ロールス・ロイス・ファントムIII(1937年式/ウィンドオーバーズ・ボディ)
ロールス・ロイス・ファントムIII(1937年式/ウィンドオーバーズ・ボディ)    ルイス・ドゥアルテ(Luis Duarte)

今回のファントムIIIは、インド・ハイデラバードの王族、アザム・ジャー氏から注文を受けたもの。ローリングシャシーは1937年7月に完成し、ロールス・ロイスで定評のあったロンドンのコーチビルダー、ウィンドオーバーズ社へボディは依頼されている。

撮影:ルイス・ドゥアルテ(Luis Duarte)

この続きは、ロールス・ロイス・ファントムIII(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・ヘーゼルタイン

    Richard Heseltine

    英国編集部ライター
  • 撮影

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の英国の自動車雑誌『AUTOCAR』(1895年創刊)。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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