知ってたら博士級? パンダがベース:ランチア Y10 小さなロールス・ロイス:パンサー・リオ 小さな高級車(1)

公開 : 2025.07.05 17:45

各社が模索してきた、小さな高級車というアイデア 裕福に見られることを好まない富裕層がターゲット 市街地での扱いやすさがメリット 興味深い斬新なクラシック10台を、UK編集部がご紹介

各メーカーが向き合ってきた小さな高級車

フルレザーの内装に最先端の装備、特別塗装といったオプションを指定できるなら、大型車を検討できる予算をお持ちなはず。質実的な小型車とは、合致しない嗜好といえる。だが、小さな高級車という考えは、以前から各メーカーが模索してきたものだ。

欧州では特に、裕福な人へ見られることを好まない富裕層は少なくない。小さなボディならではの、市街地での取り回しの良さは、お金持ちでもうれしいメリットになり得る。結果的に、欧州ブランドを中心に古くから生み出されてきた。

パンサー・リオ(1975〜1977年)
パンサー・リオ(1975〜1977年)

今回ご紹介する例の多くは、一般的なモデルの最上級グレードとは異なる、独立した存在。かの名門ブランドが手掛けた例も存在した。今では斬新なクラシックとして興味が湧くモデルたちだが、新車時は成功作と評価されたわけではなかったのが面白い。

アウトビアンキランチア Y10(1985〜1994年)

イタリアではアウトビアンキ、それ以外の市場ではランチア・ブランドで販売されたのが、ハッチバックのY10。コンセプトは「アーバン・ラグジュアリー」で、ベースはフィアット・パンダだ。エンジンの排気量は拡大され、燃料タンクは7L大きかった。

上質なインテリアにオートエアコン、パワーウインドウ、集中ドアロック、タコメーター、分割可倒式リアシートなど、当時の小さなフィアットでは選べない装備が標準。追加費用で、アルカンターラ張りのダッシュボードも指定できた。

アウトビアンキ/ランチア Y10(1985〜1994年)
アウトビアンキ/ランチア Y10(1985〜1994年)

ソフトに調整されたサスペンションが、高級志向であることを主張した。特別仕様の「エゴ」では、高級家具メーカーのポルトローナ・フラウ社とのコラボで、ブルガリアンレッド・レザーのインテリアを得ていた。ファッションブランドとの共作もあった。

★マニアな小ネタ:リアサスペンションは、新設計のオメガアクスル。これは後に、パンダにも採用されている。

パンサー・リオ(1975〜1977年)

パンサーは、ジャガーをベースにした独自モデルを提供していた英国ブランド。オイルショックでガソリン価格が高騰すると、創業者のロバート・ボブ・ジャンケル氏は、小さな高級車の必要性へ注目した。

ベース車両は、4気筒エンジンのトライアンフ・ドロマイト。コノリー・レザーの内装と、大きなラジエターグリルを備えたアルミニウム製ボディで、豪華に仕立てられた。その品質は高く、新車時は小さなロールス・ロイスと例えられたこともあったほど。

パンサー・リオ(1975〜1977年)
パンサー・リオ(1975〜1977年)

しかし手作業による製造コストは小さくなく、お値段へ反映され、38台しか生産されていない。1976年当時、リオ・スペシャルの英国価格は9445ポンド。V12エンジンを積んだジャガーXJは、7436ポンドだった。

★マニアな小ネタ:オプションで、冷蔵庫とテレビ、ドリンクキャビネットなどを装備できた。内容によっては、リオは1万ポンドを軽く超えたとか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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