1台に20か月:ファントム VI BMW傘下で新生:ファントム VII 100年の毅然 ザ・ロールス・ロイス(3)

公開 : 2025.10.05 17:45

ニューファントム発売から100年 圧倒的品質が醸成した名声 大陸旅行へ準備万全な2代目 究極的プライベートカーといえた3代目 BMW傘下で誕生した7代目 UK編集部がザ・ロールスを振り返る

ファントムVの改良版 完成に最長20か月

1960年代末のロールス・ロイスは、現代的なシャシーの次期フラッグシップ・リムジンを計画した。だが、最終的にはファントムVの改良版に留まった。シルバーシャドウ風のダッシュボードに、前後で独立したエアコンなど、新装備も得ていたが。

6230ccのV8エンジンは、新しいシリンダーヘッドを獲得。ホイールアーチへ潜らず、ボンネットを開いて点火プラグの交換が可能になった。2社が合併したマリナー・パークウォード社製ボディは、ボンネットの開閉部分が僅かに短くなった程度だ。

ロールス・ロイス・ファントム VI(1968~1990年/英国仕様)
ロールス・ロイス・ファントム VI(1968~1990年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

従来どおり、ボディパネルは亜鉛めっき鋼板とアルミ板を手作業で加工。一部の構造には木材も用いられた。フェンダー1枚の成形に3週間が必要で、ルーフは7枚のパネルで構成され、発注から完成まで20か月を要した例もあったという。

リアサスペンションは、グリースの入ったゴム製カバーで包まれたリーフスプリングに、リジットアクスル。旧式なクロスプライタイヤは、最後まで採用された。インフレや、TVや冷蔵庫などの豪華装備で価格は高騰。生産数は年間12台へ減少している。

走りは軽快 ボートのように揺れる後席

1978年に、V8エンジンは6750ccへ拡大。ATはGM由来の3速へ置換されるが、ブレーキはドラムのままだった。今回のベルベット・グリーンの1台は、当時のロールス・ロイス会長が注文した1971年式で、内装はペール・グリーンのコノリーレザー張りだ。

フロントには、「チッペンデール」と呼ばれるデザインのダッシュボード。スピードメーターは、時速120マイル(約193km/h)まで振られる。前期型で、ATは4速。見かけによらず扱いやすく、意欲的に加速していく。

ロールス・ロイス・ファントム VI(1968~1990年/英国仕様)
ロールス・ロイス・ファントム VI(1968~1990年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

右足の角度へ気を配れば、変速時の小さなショックを抑えられるが、高速で走ると後席はボートのように揺れる。カーブでボディが傾くと、レザーシートの上で身体が滑る。タイヤからはスキール音。積極的なコーナリングは、ファントム VIらしくない。

それでも、運転席の乗り心地は良好。プロのショーファーは、大きな不満を抱かず生活の糧を得ていたに違いない。

BMW傘下で誕生したファントム VII

「真のロールス・ロイスか?」2003年に復活したファントム VIIへ、AUTOCARは疑問を投じた。フォルクスワーゲン・グループとの複雑な取引きを経て、BMWはグレートブリテン島南部のグッドウッドに、新生ロールス・ロイスを立ち上げた直後だった。

BMWは、上級に仕立てた7シリーズ以上のものを生み出す必要があった。風格漂うスタイリングは、マレク・ジョルジェヴィッチ氏が担当。アイデアは、1956年のシルバークラウドにあったという。インテリアは、チャールズ・コールダム氏が描き出した。

ロールス・ロイス・ファントム VI(2003~2017年/英国仕様)
ロールス・ロイス・ファントム VI(2003~2017年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

スペースフレームはアルミ製。全長は5.8mを超え、長いボンネットとオーバーハングを、長いホイールベースが結んだ。極太のリアピラーに、なで肩のリア周り、観音開きのサイドドアなどは、いかにもロールス・ロイスだった。

新世代では、オーナーの9割が自ら運転すると予想され、動的能力の向上は必須になった。V12エンジンは760iの改良版で、6.75Lの排気量から459psと73.2kg-mを獲得。サスペンションは前がダブルウィッシュボーン、後ろは7シリーズ譲りの4リンクだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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