弱点含みの傑作:ファントム III 合理化と洗練:ファントム V 100年の毅然 ザ・ロールス・ロイス(2)
公開 : 2025.10.04 17:50
ニューファントム発売から100年 圧倒的品質が醸成した名声 大陸旅行へ準備万全な2代目 究極的プライベートカーといえた3代目 BMW傘下で誕生した7代目 UK編集部がザ・ロールスを振り返る
究極的プライベートカー 7.3LのV12
ロールス・ロイスが究極的なプライベートカーとして創出したのが、1935年のファントム III。伝統を打破しつつ、アメリカ製の安価な上級モデルや、ベントレー8リッターといったライバルへ対峙することが目指された。
従来よりパワフルで、軽量なシャシーには油圧ジャッキが内蔵され、ワンショット潤滑システムを採用。速度によって可変する、リアダンパーも組まれた。サスペンションは、ブランドとして初めて、前が独立懸架式になっている。

魅力の核となったのは、24本のプラグに2基のコイルが組まれた、7.3L V型12気筒エンジン。3連フィルターによるオイル潤滑システムも備えたが、カムシャフトの摩耗やオイル漏れ、オーバーヒートなど不具合も多く、信頼性の評判を揺るがせもした。
後期型では改良され、最高出力は167psから182psへ上昇したが、販売は振るわず。5年間に715台しか作られていない。今回の1938年式はDシリーズと呼ばれる仕様で、ボディはHJマリナー社製のサルーンだ。
多くの弱点をはらんだ傑作 商業上での妥協へ
現在のオーナー、クリス・モット氏は、ホワイトに変えられていたボディを本来のマルーンへ再塗装。ホワイトのレザー内装は、オリジナルらしい。リアシート側の装備は豪奢で、電動デバイダーを閉じれば、移動オフィスのような空間を生み出せる。
運転席は、右側にシフトレバーとサイドブレーキ。マホガニー材のダッシュボードと、ボンネット越しの眺めへ満足できる。エンジンは、今でも最も静かに回るユニットの1つ。バンク毎に調整される点火時期と高い排気圧が、洗練性と粘り強さを両立する。

加速はシームレスでうっとり。多少の渋滞でも冷静でいられ、高速カーブはお手の物。ステアリングは滑らかで、ブレーキはバランスが良く、乗り心地は程よくソフトだ。
妥協ない技術が追求されつつ、多くの弱点をはらんだ傑作といえる。整備要件は厳しく、ボディもファントム II以上とはいえなかった。6気筒モデルとの違いが大きく、利益も得にくかった。ここからロールス・ロイスは、商業上での妥協を許し始めていった。
合理化が進められたファントム V
1955年のロールス・ロイス・シルバークラウドの投入で、シャシーやドライブトレインの合理化を進める機会は巡ってきた。そこで誕生したのが、ファントム V。エンジンはV8へ統一され、後席や荷室の拡大も容易になった。
シルバークラウド譲りのボックスセクション・シャシーは、ホイールベースを約530mm延長。エンジンの位置を前方へ寄せつつ、リアシートはリーフスプリングが支えるリアアクスル直上に据えられ、車内の広大な前後長を実現している。

パワートレインも共有する。SUキャブレターは2基載り、4速ATとパワーステアリングが標準。フリクションサーボで強化される、ドラムブレーキで速度を殺した。1963年の自動車雑誌、モーター誌は、「最上級の人」のためのクルマだと評価している。
ボディはHJマリナー社製が一般的で、4灯ヘッドライトもシルバークラウドと共通し、ウエストラインより上のフォルムはややシャープ。またジェームズ・ヤング社は、PV15のリムジンとPV22のツーリングリムジン、2ドアボディなども提供した。












































































































































