アストン・マーティン・ヴァンキッシュ

公開 : 2012.10.06 17:25  更新 : 2017.05.29 18:21

■どんなクルマ?

191,000ポンド(2,400万円)の新しいアストン・マーティン・ヴァンキッシュは、ロールス・ロイスともメルセデス・ベンツとも、そしてフォード・モンデオとも異なる快適さをもたらしてくれる。それは、ノイズの低減や、シートの見直し、そして乗り心地が快適になったということとは別次元の問題だ。

新しいヴァンキッシュをドライブすれば、スーパーカーに求められる快適性というのは、高速でのスタビリティ、クイックで正確なステアリング、トップ・クラスのグリップ、シャシー・バランス、そしてブレーキの安定性などであることが明白になる。そして、それらを分別のあるドライバーがステアリングを握るならが、本当にそのクルマを速く走らせることができることとなる。

ヴァンキッシュは、その心臓に565bhpを発揮する6.0リッターV12を搭載する。その位置は、19mmも低くなっている。そして、総合的に見るのであれば、間違いなく今までで最高のビッグ・アストンである。しかも、その価格はOne-77よりも遥かに安い。

■どんな感じ?

そのプロポーションがDB9の影響を強くうけていることは明らかだ。その4回目のフェイスリフトの最大の目玉は、現在、ヴァンキッシュのためだけにあるオール・アルミニウム製のVHプラットフォームであることは間違いない。そして、そのVHプラットフォームの上に被せられるボディは、マッシブに、特にリア・エンドをふくよかにして、リア・スポイラーとカーボンファイバーのブレードが与えられている。フロント・ドアの前のサイド・ベントのデザインは美しいとしかいいようがない。しかし、そのウインドーからは、基本的にはDB9がベースであることを明らかにする。

ヴァンキッシュは独特のドアの開き方をする。それはただ単に真横に開くのではなく、少しばかり上方へも開くのだ。そのドアは長いが決して重たくなく、ドライバーズ・シートへのアクセスが容易だ。

われわれの赤いテスト車輛は、オプションで20,000ポンド(253万円)というハイ・クオリティなタンの本革シートが設えてあった。この他、One-77ステアリング・ホイール(995ポンド/12.6万円)、ヘビーウエイト・カーペット(695ポンド/8.8万円)、ヘリンボーン・カーボンファイバー・ダッシュボード(1,995ポンド/25万円)、シートとシェルフのキルティング加工(2,495/32万円)、カーボン・パドル(1,995ポンド/25万円)、リアビュー・カメラ(995ポンド/12.6万円)、カーボンファイバー・エクステリア・ルーフパネル(1,000ポンド/12.6万円)というオプションがインテリアには装備されていた。一方、エクステリアでは、20インチ鍛造アロイ・ホイール(1,995ポンド/25万円)、レッドにペイントされたブレーキ・キャリパー(995ポンド/12.6万円)が装備されていた。

私が、もしこの191,000ポンド(2,400万円)の顧客であるのなら、これらオプションによって釣り上げられた価格には納得しないはずだ。私だったら、リアビュー・カメラと295ポンド(3.7万円)のアラームのアップグレードだけですますだろう。しかし、本当のこの手のクルマを買おうとする人であれば、191,000ポンド(2,400万円)の上に20,000ポンド(253万円)のオプションがついたぐらいでは関係ないのかもしれない。

あなたがエレガントに、低くセットされたバケットシートに滑りこんでわかるのは、アストン・マーティンのエンジニアがこの空間をよりよくしようとハードに働いた跡だ。センター・コンソールは突き出たままだが、圧迫感がなく、DBSよりも遥かにデザインも洗練されている。また、スイッチやボタン類も実にシンプル且つ洗練されていて、非常に使いやすい。ドア・パネルはより肘の自由度を増すためにリデザインされ、足元の空間も広くなっている。

One-77ステアリング・ホイールには、サスペンションをノーマル、スポーツ、トラックに切り替えるスイッチと、スロットル・レスポンス、エグゾースト・ノート、ギアシフト・タイミング、ステアリング・アシストを切り替えるスイッチが付けられている。

ガラスのキーをホルダーに押し込んで、エンジンをスタートさせる。ブリッピングなどは不要で、エンジンは簡単に目を覚ます。6速オートマティック・ギアボックスを、パドル・シフトで1速を選びスタートさせると、クルマは滑らかにスタートする。それは、エンジンが暖まる前、例え2500rpmでアイドリングしていようとスムーズな発進をする。

これはトップクラスの”通常”のオートマティック・ギアボックスだ。そして、最新のエレクトリック・デバイスとパドル・シフトによって
素早いギア・シフトが可能だ。

新しいダブル・バリアブル・バルブ・タイミングを得たエンジンは、DBSの510bhpから565bhpに上がり、トルクも5500rpmで63.2kg-mを発揮する。最高速度は295km/hで、0-100km/h加速が4.1秒というパフォーマンスを見せる。

アストン・マーティンをドライブすることは簡単ではるが、それは取るに足らないということではない。強力で特別なフィーリングを持ち、そして何よりも直感に忠実である。低いポジションに座り長いボンネットの下で狙いを付け、スロットルを絞るとか、パドルを動かくとかのアクションを起こした時、その予想を裏切らない正確なアクションを見せてくれるのだ。

数百時間の改良がこのクルマのために費やされたが、フル・スロットルでの挙動や、ノーズがどんな動きをするのか、どのぐらい速いリカバリーを見せるのかといったすべてのことに関して、アストン・マーティンの費やした時間の結果が表れていると言えよう。

最も近いライバルは、さらに高価なフェラーリF12ベルリネッタだが、そのF12と較べても爆発的ではないが、速さという面は、速い用に感じられた。

ヴァンキッシュは、そのサイズにもかかわらずウルトラ・スムーズな挙動を見せる。あmた、100km/h以上でもアンダーステアにでもオーバーステアにでも持ち込むことが容易にできる。確かに、サーキットではその大きさは不利かもしれないが、一旦リズムに乗ってしまえば、サーキットでも十二分に楽しめるクルマでもある。

■「買い」か?

ヴァンキッシュの魅力が、すべての人に受け入れられるかといえば、そうではないかもしれない。

しかい、凹凸の激しい道での落ち着きは、実に驚くべきことだ。英国のB級国道のような酷い道でも、そのショックをドライバーに伝えない。ある意味、英国の道のために造られたスーパーカーといってもよいかもしれない。そして、そういった部分も評価してもらえるのであれば、ヴァンキッシュは褒め称えられるべきクルマということができるだろう。

(スティーブ・クロプリー)

アストン・マーティン・ヴァンキッシュ

価格 189,995ポンド(2,411万円)
最高速度 295km/h
0-100km/h加速 4.1秒
燃費 6.9km/l
CO2排出量 335g/km
乾燥重量 1739kg
エンジン V12 5935cc
最高出力 565bhp/6750rpm
最大トルク 63.2kg-m/5500rpm
ギアボックス 6速オートマティック

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