「共感の蓄積」「情熱とプライド」 アストン マーティンとルノー 親友デザイナーへ聞く(2)

公開 : 2025.09.26 19:10

古くから親しい仲の、アストン マーティンとルノーのデザイナー 特徴の異なる2台へデザイナーが抱く印象は? クルマのデザインで意識するものとは UK編集部が2人の敏腕へインタビュー

普通車のデザイン水準は高級車と同等に

マレク・ライヒマン氏(以下:MR):デザインでは、イノベーションも課題の1つ。予算は限られます。カーボンでも樹脂でも、同じ形は作れるかもしれません。定義したい形状で、材質は予算で決まります。ルノー5 E-テックの場合は、生産数が多い。

ローレンス・ヴァン・デン・アッカー氏(以下:LA):つまり、あちら(アストン マーティン)には難しいことを(ルノーでは)実現できる。最近は、高級車と普通車のデザイン水準は、同等になったといえます。

グレーのアストン マーティン・ヴァンキッシュと、イエローのルノー5 E-テック
グレーのアストン マーティン・ヴァンキッシュと、イエローのルノー5 E-テック    マックス・エドレストン(Max Edleston)

LA:かつて、安価なハッチバックには各部へ妥協が見えました。しかし5 E-テックは、アストン マーティンの隣に停まっても、魅力を理解できると思います。パワーはなくても、デザインでは、あらゆる側面に愛情が注ぎ込まれています。

すべてからインスピレーションを受ける

AUTOCAR(以下:AC):デザイナーとして、他のクルマから学び取ることは?

LA:アストン マーティンは、デザインのベンチマーク。ブランド体験そのものです。どのようにモデルを位置づけ、広告を展開し、ブランディングを活用するのか、多くのことを学んでいます。

ルノーのデザイナー、ローレンス・ヴァン・デン・アッカー氏(右)と、アストン マーティンのデザイナー、マレク・ライヒマン氏(左)
ルノーのデザイナー、ローレンス・ヴァン・デン・アッカー氏(右)と、アストン マーティンのデザイナー、マレク・ライヒマン氏(左)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

MR:すべてのことから、インスピレーションは受けます。ファッション、プロダクト、建築、家具など。常に観察し吸収しています。自分ならできる、といい聞かせながら過ごしてもいます。誰かにできないといわれても、他人が実現したら悔しいですよね。

共感の蓄積がある 正しく作る必要がある

AC:ローレンスさんは、高級モデルへ挑戦したいと思ったことは?

LA:もちろん。マレクさんは、わたし達のモチベーションの源になったクルマをデザインされています。でも時を経て、今ではスポーツカーと同じくらい、5 E-テックのデザインも楽しんでいますよ。幸いなことに、アルピーヌなら実現のチャンスもあります。

ルノー5 E-テック(英国仕様)
ルノー5 E-テック(英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

AC:5 E-テックは、特有の存在感を放っています。ヴァンキッシュの隣へ並んでいても、写真を撮る人は少なくありませんね。

MR:ベースとなるファンがいますよね。サンクには、子どもの頃に乗ったりラリーで走っているのを見た、過去の記憶による感情的なものがあります。

LA:このようなモデルには、共感の蓄積があります。作るなら、正しく作る必要がある。新しいメガーヌではルールはないといえますが、5やアストン マーティンなら、人々が正しくないと指摘するでしょう。失敗はできないんです。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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