ただ、よく考えるとアルファ・ロメオは元来、V6を作るのが得意なメーカーだった。それに、(意見はわかれるが)ジュリアのV6は、フェラーリ・カリフォルニアのV8に ‘インスパイア’ されたともいわれている。ならば、そこまでハンデにはならないかもしれない。

高速サルーンにとって、すばらしいエンジンは大切。わたしはそう思う。ドライビング・エクスペリエンスの多くを、エンジンが左右するといってもいいだろう。

そういった意味合いにおいて、C63 Sのエンジンは非の打ちどころがない。多くのライバルを蹴散らすのに十分なエンジン・サウンドとパワー、そしてデリバリー・マナーを備えているだけでなく、クルージングの振る舞いにも抜かりはないからである。

なかでもトルクの生みだし方は、海のように深く、広々とした余裕がある。ペダルを踏む具合と、パワーの立ちあがりかたに数ミクロの狂いがないのもよい。ほんとうにターボ? そう思ってしまうほどである。

5000rpmを超えたとしても、息を荒げる様子はない。もちろんサウンドはリッチで迫力がある。