「ディーゼル衰勢」は正しい? 0-160km/h=10秒切りをパナメーラで試す

公開 : 2017.04.22 15:00  更新 : 2017.07.04 14:41

AUTOCARが思いついた「ズルする方法」

ロード・テストでは、2名乗車と燃料満タンを義務づけている。それを助手席は無人にして、燃料もわずかしか入れずにアタックすれば、誰もが再現可能という条件を逸脱せずとも、コンマ何秒かは削れるのではないかと考えたわけだ。

それを試すべく足を運んだのは、レスターシャーのブランティングソープ・プルービング・グラウンドである。

このテストには、さまざまなスキルが求められる、と言いたいところだが、必要なのは取説を読んで、ローンチ・コントロールの操作方法を覚えることだけ。

走行モードをスポーツ・プラスに入れ、左足でブレーキ、右足でスロットルのそれぞれのペダルを思い切り踏み込み、準備完了が通知されたら左足だけ持ち上げればいい。クルマは飛び出し、彼方をめがけて走っていく。身体に掛かる物理的な力を別にすれば、驚くほど劇的なことはない。

低回転型で、トルク主導の4.0ℓV8ツイン・ターボは、パナメーラを転がるように走らせる。正直、今回の試みが失敗する見込みは低いと思った。

それにしても、である。

97km/hに3.7秒、161km/hにはにわかに信じがたいが9.3秒で到達したのだ。

新型の911カレラ2の9.4秒や、V6スーパーチャージャーを積むロータスエキシージSの9.6秒と比べると恐ろしい結果だ。

しかしディーゼルが、流れの速いラウンドアバウトに合流できないほど遅かった時代に育った人間としては、目の前の数字に納得できなかった。

そこで、Uターンして再度計測してみる。復路では風力10の強風に晒されたため、タイムは往路より遅くなった。それでも、0-97km/hが3.8秒、0-161km/hが9.6秒である。

しかも、265km/hまでの加速もスムースでクイックだったので、285km/hを謳う最高速もよくある控えめな数字であろうことは疑うべくもない。

おそらく、それこそが注目に値するのだ。30年前、われわれのテストでこれより上の速度を記録したクルマはたった一台、ランボルギーニカウンタックQVのみだった。それでさえ、2km/hと上回っていないのだが。

しかし、それ以上に特筆すべき点が、このパナメーラにはある。楽な加速や奮い立つようなサウンド、長い航続距離といったすべてを、このパナメーラは持ちあわせているのだ。

これよりパワーはあるが重いパナメーラ4ハイブリッドを比較すると、あちらはエンジンに粗が目立ち、実燃費は劣り、正直言って相手にならない。辛うじて勝っている点を挙げるとすれば、税制面の優遇くらいか。そうであっても、やはりディーゼルを選ぶのが賢明だ。

長い年月において、優れたディーゼル車は少なからずあったが、今回のパナメーラはその中でも最新にして最良の1台だと思う。

では、これに代わるかもしれない候補はあるだろうか?


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