伊仏2台のスモール・ホットハッチ、デルタHFターボ & サンクGTターボ

公開 : 2017.05.21 00:10  更新 : 2017.05.29 19:22

洗練された印象のデルタHFのパワーユニット

走りだしてみるとHFのツインカム・エンジンは、とても洗練された印象をもたらしてくれる。これまでのキャブレターは、ウェーバーとマニエッティ・マレリが共同開発した電子式インジェクションに置き換えられており、エンジン・ノイズは静かで、同時に10psの出力向上を果たしている。

アクセル・ペダルを床まで踏み込むと、小型化したT2ギャレット・ターボチャージャーは即座に回り始め、ミドル・レンジのとてつもないパンチとともに長くなめらかなパワー供給が始まる。ラグやトルクステアの類は一切ない。

ステアリング操作に対する反応も素早く、方向転換すると、重心を下げ冷却効果を改善したマーク2エンジンのおかげでぐいぐいと前に進もうとする。コーナリングは若干のアンダーステア傾向だ。限界付近に近づくとオーバーステアに転じるが、いつだって予測がつきやすく、スロットル操作で簡単にコントロールできる。

ストロークが長く、ゲートの感触がいささか曖昧なシフトだけは残念であるが、それ以外は、スリルに満ち溢れている。奥さんや子どもの送り迎えに励む落ち着いた男性でも、必要とあらばその楽しさに没頭できるはずだ。

ラリー界での伝説的な活躍以来、十数年ぶりに採用されたHFバッジ。

3000rpmから豹変するサンクGTターボ

一方のサンクGTは、子どもたちにとってさえポケット・サイズのクルマだと感じられる。デルタHFはシートのうえに腰掛けるのに対して、サンクGTはコクピットが身体をすっぽりと包んでいるような感覚になる。カチリとした動作のギアボックスはとても気持ちがいいし、上部を削ぎ落した触り心地のいいシフト・ノブも逸品である。

さらに素晴らしいのは、ライバルよりも僅かにラグを感じるものの、ターボのブースト圧が2000rpmで半分に、2800rpmで4分の3に、そして3000rpmでマックスに到達するという加速特性だ。自然吸気エンジンに慣れた人なら、化学合成物質の作用でハイになってしまうようなサンクGTターボの非現実的な加速に驚くだろう。

それでも、このキビキビした走りを受け入れるのにそれほど時間は掛からないはずだ。ドライバーが刻一刻と感じるこのクルマの速さは、そもそも諸元が示す通りのものだからだ。田舎道まで足を伸ばし勢いよくコーナーに飛び込んでみると、専用のスプリングやダンパー、アンチ・ロールバーを組み合わせるリアのトレーリング・アーム式サスペンションの名技を感じられる。

グリップはどこまでも粘り強く、シャシーも素晴らしい。ハンドリングのキャラクターはデルタHFのそれに似ているが、フィーリングそのものが硬質で安定感に勝るため、ゆるやかなコーナーやタイトなヘアピンでもおのずと速度域が高まる。サンクGTターボの当時の価格帯で、同じようなパフォーマンスを発揮するクルマはそれほど多くはない。

「ペッパーポット(=胡椒入れ)」アロイホイール。


他のメーカーと異なり、ルノーは単なる「焼き直し」のクルマではなく、純粋にパフォーマンス志向のクルマを作り上げたといっていい。当時、テクノロジーの進歩と平行してマーケットは大きな変貌を遂げようとしていた。

皮肉にもランチア・デルタはその逆風を先頭で浴びることになり、最も激しいホットハッチの名を取り戻すために、そして86年から始まる4WD全盛期に対応するために、デルタ・インテグラーレへと世代交代したのだ。

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